Research Abstract |
未治療の急性期潰瘍性大腸炎(UC)患者の一酸化窒素(NO)として尿中のNO_3,NO_2を測定した.UC患者の活動期でNO_3は,健常人に比べ有意に高値を示した.ステロイド,サラゾピリンの投与によりNO_3は低下,NO_2の上昇を認めた.約3ヶ月後の治癒期では,NO_3,NO_2の低下とともに潰瘍の治癒および臨床症状も改善した.しかし,薬剤抵抗例ではNO_2,NO_2ともに高値を持続した.血中のサイトカインは,インターロイキン-3,6,TNF-αが健常人では全く検出されないのに対し,活動期のみ約60%に認められた.さらに薬剤抵抗例では,これらのサイトカインは各病期で検出されなかった.非活動期観察例においても,大腸ファイバー所見,臨床症状のよる再発の前に,尿中のNO_3,NO_2の上昇が観察された.最近,中毒性巨大結腸症を起こす症例の原因として粘膜の誘導型の一酸化窒素合成酵素(iNOS)に比べ筋層の構成型(cNOS)活性の上昇が関与すると報告された.以上の事実は,UCの発生には,粘膜中のマクロファージによるTNF-αなどのサイトカイン産生が亢進し,Tーリンパ球,好中球が活性化されNO,活性酸素により細胞障害を起こすと思われた.さらに薬剤抵抗例では,サイトカインにより誘導されるiNOS活性ではなくcNOSあるいは神経型(nNOS)の活性の上昇が示唆された.現在,生検材料を用い薬剤抵抗例におけるcNOS,nNOSの検出,発現について検討中である.さらに,in vitroでのcNOS,nNOSのインヒビターの検出,発見は,薬剤抵抗例における治療薬として効果が期待される.
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