1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07671508
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
稲尾 意秀 名古屋大学, 医学部, 講師 (20151566)
|
Keywords | 脳 / 損傷 / グリア / 免疫組織染色 / 細胞間接着因子 / インターロイキン-1 |
Research Abstract |
IL-1βは損傷脳で早期から増加し、治癒促進作用を持つと考えられるが、その中和抗体を投与することにより損傷部での治癒過程がいかに変化するか検討した。そのためにまず、初年度に行った免疫組織染色法に加えて、ICAM-1(Intercellular Adhesion Molecule-1、細胞間接着因子)染色を追加し、細胞間接着分子の発現、動員される炎症細胞の分布などを経時的に観察・検討した。ついで、この実験モデルにおいて、種々の濃度における抗IL-1βモノクローナル抗体(MAb)を投与し、抗IL-1β抗体の投与が損傷治癒とくにICAM-1の発現に及ぼす影響を検討した。その結果、損傷周辺部にICAM-1陽性細胞が出現し、二重染色の結果、それらの多くは、GFAP陽性のアストロサイトであることが明らかとなった。ICAM-1陽性グリア細胞は、外傷後24時間から増加し、48時間後にピークとなり、7日間続いた後に減少した。100および500μg/mlという高濃度の抗IL-1βモノクローナル抗体の損傷脳局所への注入により、24時間および48時間後のICAM-1陽性グリア細胞の出現が抑制された。外傷後の急性期に、ICAM-1がグリア細胞に発現し、外傷後の炎症性反応に関与している可能性が示唆された。抗IL-1β抗体の投与により、ICAM-1陽性グリア細胞の発現が抑制されたことは、外傷後のグリア細胞でのICAM-1の発現にIL-1βが関与したことを示唆している。 損傷脳の修復における生物学的活性物質の役割については、未だ解明されていないことが多い。今後も、生物学的活性物質の産生や増加が、治癒に働くのか、機能回復との関連はどうかなど、修復過程の中での位置づけ、相互の役割等について検討していく必要がある。
|
Research Products
(1 results)