1997 Fiscal Year Annual Research Report
脳挫傷周囲組織における限局性脳血流障害の発生機序とその治療に関する研究
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07671547
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
山本 隆充 日本大学, 医学部, 講師 (50158284)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坪川 孝志 日本大学, 総合科学研究所, 教授 (80058958)
片山 容一 日本大学, 医学部, 教授 (00125048)
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Keywords | 頭部外傷 / 脳挫傷 / 脳組織浸透圧 / 脳血流 / 血栓形成 / 脳血管障害 / 脳浮腫 / ラット |
Research Abstract |
【目的】前年度までの研究より、脳挫傷組織と隣接する脳組織では、外傷早期より脳血流が著明に低下すること、そしてこの血流低下には細血管内での微小血栓形成が関与していることが明らかとなった。脳挫傷の転帰を大きく左右する因子としては、脳血流量の低下に加えて、受傷後6時間から48時間にかけて出現する挫傷性浮腫の存在がある。本研究では、脳挫傷後に認められる脳血流低下と脳浮腫形成の関係を知る目的で、組織浸透圧の変化に注目し以下の実験を行った。【方法】ラットの大脳皮質に脳挫傷を作成し、1)挫傷性浮腫の程度を、比重法、乾燥重量法にて測定した。2)挫傷組織の組織浸透圧を、蒸気圧浸透圧計にて測定した。3)挫傷脳組織のナトリウム、カリウムイオン濃度を、イオンクロマトグラフィーにて測定した。【結果】正常脳組織の水分含有量と組織浸透圧は、それぞれ79.7±1.3%、311.4±11.3mmol/kgであった。脳挫傷作成後、水分含有量は経時的に上昇し、12時間後には、85.6±3.2%(p<0.01)まで達した。組織浸透圧は、受傷後30分で367.5±14.6mmol/kg(p<0.01)に上昇し、12時間後には402.8±15.1mmol/kgに達した。組織のナトリウム含有量は、正常値の46.5±6.5mmol/kgから6時間後には66.4±13.7mmol/kg(p<0.05)まで上昇した。受傷後6時間の組織カリウム含有量は、正常値の92.7±11.9mmol/kgより78.3±22.0mmol/kgまで低下した。組織ナトリウムおよびカリウムイオンの総和には、有意な変化は認められなかった。【考察】挫傷脳では、受傷直後より著しい組織浸透圧の上昇が生じる。組織浸透圧の上昇は、挫傷脳組織に水分を引き込み脳浮腫形成の原因となる。この浸透圧上昇は、無機イオン濃度の上昇のみでは説明できないことより、細胞膜などの高分子化合物の崩壊によって生成されるmetabolic intermediate osmoleやidiogenic osmoleがその主因となっているものと考えられる。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] 山本隆充、片山容一、他: "骨傷のない頚椎損傷急性期の治療法:Killed end corticospinal evoked potentialの推移からみた治療法の検討" 日本パラブレジア医学会雑誌. 9(1). 24-25 (1996)
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[Publications] 山本隆充、片山容一、他: "大脳皮質運動領の直接刺激法と経頭蓋電気刺激法によって記録されるMEPの比較:同一症例における術中モニタリングの結果から" 脊髄電気診断学. 18(1). 143-146 (1996)
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[Publications] Yamamoto T,Katayama Y,etc: "A study of methods of evaluating prologed consciousness disturbance:Based on the results of deep brain stimulation therapy and long-term follow-up" The Society For Treatment of Coma. Vol.5. 99-102 (1996)
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[Publications] Aoyama N,Katayama,Y et al.: "Microthrombosis formation in cerebral contusion : A cause of trauma-induced secondary tissue damage" Advanses in Neurotrauma Research. Vol.7. 85-90 (1996)
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[Publications] Mori T,Katayama Y,Yamamoto T,et al.: "Progressive edema formation in contused brain : Role of tissue osmolality and ion concentrations" Advabces in Neurotrauma Research. vol.8. 15-17 (1997)
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[Publications] 山本隆充、片山容一: "遅延性意識障害の治療" 救急医学. 21. 1737-1742 (1997)
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[Publications] 山本隆充: "最新脳神経外科学 手術中のモニター法" 1880(1137-1144) (1996)