1995 Fiscal Year Annual Research Report
胞巣状軟部肉腫の組織起源に関する電子顕微鏡学的研究
Project/Area Number |
07671624
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
大野 藤吾 帝京大学, 医学部, 教授 (70082120)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
朴 杓允 帝京大学, 医学部, 助手 (20147094)
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Keywords | 肉腫 / 胞巣状軟部肉腫 / 組織起源 / T細管様構造 / 横紋筋細胞 / 電子顕微鏡 |
Research Abstract |
胞単状軟部肉腫(ASPS)は、特異な組織像を示す肉腫として知られているが、1951年に発現されて以来、多くの研究が行われたにもかかわらずその組織起源については不明のままである。現在、ASPSの組織起源として神経原性と筋原性の2つの有望な仮説が提出されているが、横紋筋由来を示す結果が多く集りつつある。我々は、ASPSの組織起源を理解するために、横紋筋細胞で特異的に見られる構造(筋線維やT細管)がASPS組織に存在するのかどうかを電顕を用いて調べた。4例のASPS組織を広範囲・精密に捜した結果、筋線維を確認できなかったが、4例中2例の組織で、細胞膜と連続する滑面の管状構造(T細管様構造)の集簇を細胞質に発見した。この構造の出現頻度は低く、腫瘍細胞の豊富な細胞オルガネラの中では普通全く目立たない。加えて、この構造と細胞膜とが連続しているパターンを超薄切片上で得ることは極めて困難である。従って、ASPS腫瘍細胞の細胞膜とT細管様構造の深い関係を明らかにするためには、この構造を超薄切片上でも容易に検出できなくては研究の更なる進展はない。現在、4例のASPS症例に加え、更に1名のASPS患者が本医学部に入院治療中であるが、この患者の腫瘍組織から切除された新鮮組織をruthenium redを用いた細胞膜トレース固定液(通常の電顕の前固定液と後固定液に0.5%のruthenium redを加えた固定液)で長時間固定した。細胞膜トレース試薬として知られているruthenium redは細胞内部に浸透せず、細胞膜表面にのみ結合するので、細胞膜の識別に役立つ。この方法で他のオルガネラは未染であるにもかかわらず、細胞膜とT細管様構造は特異的に強く染め出されていた。この結果はT細管様構造が細胞膜と連続していることを示す。通常の方法では、同定しにくかったT細管様構造でも容易に識別可能となった。
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