1996 Fiscal Year Annual Research Report
肺血管傷害における一酸化窒素吸入の有効性に関する研究
Project/Area Number |
07671661
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
石部 裕一 鳥取大学, 医学部, 助教授 (40122014)
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Keywords | 肺傷害 / 肺血管透過性 / エンドトキシン / 虚血再灌流 / 一酸化窒素 / ロイコトリエン |
Research Abstract |
2種の急性肺血管傷害のモデルを用いて、その発現機序におけるアラキドン酸カスケードの関与および一酸化窒素(NO)吸入の効果を検討した。 実験1.家兎を生理食塩水投与群(対照群、n=6)、E.Coli由来のエンドトキシン(リポポリサッカライド;LPS)20μg/Kg投与群(LPS群、n=6)およびLPS投与前ロイコトリエンB4(LTB4)拮抗薬(ONO-4057)投与群に分け、投与前、投与後3、6時間後に耳静脈より採血し、白血球数、活性酸素生成能(CL)測定を行ない、6時間後脱血死させ、右肺の湿乾重量を測定した。LPS投与群でCLは3、6時間後と有意に上昇し、右肺湿重量/体重比は対照群に比べて有意に高かった。また、LPS投与前にONO-4057を5mg/Kg投与群ではLPS投与による末梢白血球数やCLの変化に影響を与えなかったが、10mg/Kg投与群では、CLの増加を抑える傾向が見られた。この結果より、LPSにより好中球の活性酸素生成能が活性化され、LTB4を介する肺血管傷害発現の可能性が示唆された。 実験2.家兎の摘出肺潅流標本を作成し、無処置時間対照群(n=6)、60分の無換気・潅流停止後再潅流した群(虚血・再潅流(IR)群、n=6)、虚血・再潅流後より一酸化窒素(NO)を40ppm吸入した群(IR+NO群、n=6)に分け、対照、IR後5分、30分、60分に肺血管濾過係数(Kfc)、肺血管抵抗(Rp)の経時変化、ならびに左肺の湿乾重量比(W/D)測定を行った。IR群では対照群に比較して、KfcはIR後有意に上昇し、一旦低下するが、再び上昇した。Rpは虚血・再灌流5分後から上昇し60分まで持続した。W/Dは変化しなかった。IR+NO群ではIR5分後Kfcは上昇したがその後の上昇が抑えられた.Rpの上昇は5分後から抑制された。 この結果より、虚血・再潅流標本では、再灌流直後には肺血管透過性の亢進と肺血管抵抗の上昇がみられるが、再潅流直後からのNOの吸入は、肺血管抵抗を低下させ、再灌流による肺傷害を減弱する可能性が示唆された。
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