1997 Fiscal Year Annual Research Report
細胞内運動装置のCa^<2+>感受性からみた膀胱癌の浸潤および転移能に関する研究
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07671743
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Research Institution | Fukushima Medical University, School of Medicine |
Principal Investigator |
山口 脩 福島県立医科大学, 医学部・泌尿器科, 教授 (60006814)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
嘉村 康邦 福島県立医科大学, 医学部, 講師 (50220744)
横田 崇 福島県立医科大学, 医学部, 講師 (20240939)
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Keywords | 膀胱癌 / ブラディキニン受容体 / 細胞運動 / カルシウムイオン |
Research Abstract |
本研究では、これまでにマウス膀胱癌を主な対象とし、ブラディキニン(BK)によって細胞質内にCa^<2+>が動員されること、細胞中に増加したCa^<2+>は収縮蛋白に作用し癌細胞に変形収縮運動を起こすことなどを明らかにしてきた。今年度はヒト膀胱癌について、分子生物学的、薬理学的検討を加えた。 1)RT-PCR法によってヒト膀胱癌のBK受容体を検討したところ、BK_1およびBK_2のmRNAを発現していたが、Ca^<2+>動員の方に関与するBK_2mRNAはBK_1mRNAより10倍以上多いことが明らかとなった。一方、ヒト膀胱粘膜上皮細胞では、BKmRNAの発現は膀胱癌と比較してきわめて少なかった。また、BK_2mRNAの発現量は、膀胱癌の悪性度(grade)が進むほど増加する傾向を示した。 2)ヒト膀胱癌細胞を短期培養し、Ca^<2+>蛍光指示薬であるfura-2を負荷することにより、BKに対するcalcium responseを調べた。その結果、BKは用量依存的に細胞質内のCa^<2+>濃度を上昇させると共に、この反応はBK_2-拮抗薬で阻害されることが判明した。したがって、Ca^<2+>を動員するのはBK受容体サブタイプの内BK_2受容体の方であることが推察された。 3)癌細胞の浸潤性とBKの影響について、マトリゲルを用いた浸潤能テストにより検討を加えた。BKと一緒に培養したヒト膀胱癌細胞は、対照群に比し有意の浸潤能亢進を示した。また、この浸潤能亢進効果はBK_2-阻害剤により抑制された。 以上より、膀胱癌細胞膜に発現したBK_2受容体は、細胞質へCa^<2+>を動員し収縮蛋白を活性化することにより癌細胞の運動を引き起こし、これが浸潤や転移に関与していることが推定される。また、種々の癌がBKの前駆物質を産生することが報告されているので、BK_2受容体を介するオートクリン様式が癌細胞の運動性に関与する可能性が十分考えられるが、これは今後の課題として残されている。
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