Research Abstract |
45, XY, t (14 ; 21) (q10 ; q10)の核型のRobertson型転座保因男性(保因者)の精子について,fluoresence in situ hybridization (FISH)法を用いて14番,21番染色体異常の頻度を検討するとともに,精子形成時の成熟分裂におけるinter-chromosomal effectの有無を見るために3番,9番,17番,18番染色体異常の頻度についても検討した.精子をスライドグラス上に固定した後dithiothreitolで前処理を行いFISH法に供した.FISH法は,2種類のDNAプローブを同時に用いたtwo-color法で行い,プローブはD3Z1, D9Z5, D14S308, D17Z1, D18Z1, LSI21を用いた.保因者では総数18566個,対照の二人の正常核型男性では27702個の精子のシグナルを蛍光顕微鏡下に判定した.21番または14番染色体のシグナルを2個認めるdisomy精子の割合は,保因者では2.3%, 3.3%で,対照の0.22%, 0.17%に比して有意に高値を示したが,理論値の16.7%に比して明らかに低値であった.また,21番または41番染色体のシグナルを1個も認めない不均衡型精子の割合は保因者では2.6%, 3.4%で対照の0.17%, 0.11%に対し有意に高値を示したが,理論値の16.7%に比して明らかに低値であった.一方,保因者における3番,9番,17番,18番染色体のdisomy精子の割合は,各々,0.22%, 0.24%, 0.22%, 0.23%で,対照の0.23%, 0.27%, 0.26%, 0.17%と有意な差を示さなかった.以上の結果より,Robertson型均衡型転座保因男性では,精子形成時の成熟分裂での分離は不均等に起きている可能性が示唆された.また,inter-chromosomal effectは存在しないと考えられた.
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