1996 Fiscal Year Annual Research Report
卵巣癌の浸潤・転移機構におけるプロテアーゼ・同インヒビターの役割に関する研究
Project/Area Number |
07671811
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
平原 史樹 横浜市立大学, 医学部・附属病院, 講師 (30201734)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮城 悦子 横浜市立大学, 医学部・附属病院, 助手 (40275053)
五来 逸雄 横浜市立大学, 医学部, 講師 (70162170)
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Keywords | 卵巣癌 / 浸潤・転移 / プロテアーゼ / プロテアーゼインヒビター / トリプシン / トリプシノーゲン |
Research Abstract |
癌の浸潤・転移の過程では、細胞外基質の分解に関与する酵素とそのインヒビターが重要な役割を果たしている。われわれは、卵巣粘液性腺癌由来培養細胞株(MCAS)が、従来報告されている種々のマトリックスメタロプロテアーゼに加え、セリンプロテアーゼ、なかでもその代表的酵素であるトリプシノーゲンを分泌していることを見い出した。卵巣癌の進展におけるトリプシンの関与を明らかにするために、卵巣癌由来培養細胞株よりtotal RNAを抽出し、Northern blot法およびRT-PCRにより増幅した産物のSouthern blot法によりトリプシノーゲン遺伝子発現を検討しその存在を確認した。また手術時に採取した臨床検体における遺伝子発現をNorthern blot法により確認した。トリプシノーゲン蛋白の局在は、抗ヒトトリプシン/トリプシノーゲンモノクローナル抗体を用いて、卵巣癌組織の免疫染色法により検討し、卵巣癌組織の癌細胞に局在していることを見いだした。結論として本酵素は細胞株に於ても発現が認められるが、癌組織自体でより強く発現しており、強い蛋白分解活性を有するトリプシンが、in vivoにおける卵巣癌の浸潤、転移に関与していることが示唆された。 また我々は、胃癌や卵巣癌細胞がセリンプロテアーゼであるトリプシンを分泌し、そのインヒビターの一つを精製、cDNAを単離したところ、それがPP5/TFP12であることが判明し、悪性化に伴う発現の変化を検討するため、4種の絨毛癌細胞株を用いてノザン法、サザン法を行った。その結果、絨毛癌細胞株ではPP5mRNAの発現が認められず、このPP5の発現の消失により、局所におけるトリプシンはじめセリンプロテアーゼ活性が相対的に亢進し、さらに血液凝固反応の惹起という機序を介して、癌細胞の浸潤性増殖、血行性転移能が高まる可能性が考えられた。これらの研究結果から、セリンプロテアーゼの代表的酵素であるトリプシン/トリプシノーゲンならびにそのインヒビターであるPP5の癌組織における存在様式がその浸潤・転移機構に関与している可能性を示唆した。
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