1997 Fiscal Year Annual Research Report
抗癌剤耐性機構におけるheat shock protein 60の意義
Project/Area Number |
07671826
|
Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
木村 英三 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (70161552)
|
Keywords | 抗癌剤 / 耐性 / heat shock protein / 温熱療法 / 卵巣癌 / 生存率 |
Research Abstract |
[目的]Heat shosk protein 60(hs60)はミトコンドリアに存在する保存的な蛋白質の一種であり、細胞を種々のストレスより保護している。cisplatin(DDP)耐性とhsp 60発現との関連を検討し、hsp 60 mRNA 発現レベルが卵巣癌患者の予後因子として有意義であることを明らかにする。 [方法]本人の同意を得て手術時に採取したヒト卵巣癌組織(n=51)のhsp 60 mRNA 発現レベルにより、症例を低発現群(n=25)と高発現群(n=26)に分類し、生存率との関連を検討した。また、漿液性卵巣癌培養細胞株(2008)を用い、hsp 60の発現に対するDDP、EGF、TPA、BSOの効果を検討し、DDP耐性株(C13^*)とも検討した。tRNA、DNAはノーザンブロット法、サウザンブロット法にて解析した。 [結果]hsp 60 mRNAメッセージは2.3kbであった。低発現群ならびに高発現群におけるMedian survival、4年生存率はそれぞれ46.8ヶ月、41%ならびに22.1ヶ月、16%であり、低発現群で有意(P=0.002)に予後良好であった。一方、C13^*のhsp 60の発現はより強く、また2008ではDDP処理により、発現が増強したが、EGF、TPA、BSOによる処理では不変であった。各検体ともhsp 60のgene amplificationは認めなかった。 [結論]hsp 60 mRNAの発現レベルは、卵巣癌の新しい予後因子となり得る。一方、DDP耐性株において過剰発現しており、さらにDDP処理にて発現が増強することより、hsp 60の発現がDDP耐性に関与している可能性があり、その機序は既知のDDP感受性を修飾する物質の作用経路とは異なることが示唆された。また、その発現調節は転写レベルで行われていると思われる。
|