Research Abstract |
血中LH値が市販の測定キットで測定感度以下を示した患者および家族の白血球からゲノムDNAを抽出し,LH-β遺伝子を検索した結果,2ヶ所で点突然変異があり,第8番目と15番目のアミノ酸がそれぞれTryからAry,IIeからThrに置換されるhCG typeのアミノ酸変異を報告した.この変異LHの点突然変異の2部位はそれぞれ制限酵素Ncol,Fokl siteに相当するので,restrction fragment polymorphism (RFLP)を用いて,モモ,ヘテロおよび正常をスクリーニングできることが判明した.今回,不妊症例でも排卵のある50例と排卵障害のある56例をRFLPを用いて検討し,ホモ,ヘトロがそれぞれ2.0%,10.0および0%,10.7%の頻度でみられ,その頻度に差がなかった.また2回以上分娩歴がある経産婦の113例および男性患者の119例を対象として同様に検討し,変異LHのホモ,ヘテロがそれぞれ0.9%,8.8%および1.7%,8.4%の頻度で存在し,妊孕性が確認されている男女でその頻度に差がなかった.すなわち,日本における不妊症例およびコントロールとしての経産婦および男性では変異LHのホモが0.9-1.7%,ヘテロが8.4-10.3%の頻度で存在し,差がなかった.これらのことよりこの変異LHの存在は排卵や妊孕能に大きな影響を及ぼしていないと推察された.しかし,変異LHの新しいタイプをもつ症例における黄体機能不全例の報告や,多嚢胞卵巣症候群との関連も報告されている.今回の検討では変異LHはin vitroでの生物学的活性が高く,変異LHのホモ型に反復流産例が1例あり,ヘテロ型で流産既往の頻度(36%)が高いなどの結果が得られ,排卵,生殖機能に与える変異LHの役割についてはさらに検討する必用がある.また血中LH値を市販のSPAC-S kit(LH-SPAC)およびIMX kit(LH-IMX)で測定すると,その比(LH-SPAC/LH-IMX)はRFLP分析での正常:0.92,ヘテロ:0.47,ホモ:0の3群に分類され,臨床的には測定法により血中LH値の判定には注意を要する。
|