1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07671855
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
毛利 光宏 神戸大学, 医学部, 助手 (20166317)
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Keywords | 喉頭癌 / 喉頭摘出術 / 気管食道瘻発声 / 新声門 / 筋電図 / 構音調節 / 誤嚥防止 / 呼吸 |
Research Abstract |
喉頭癌で喉頭摘出を受け当科において経過観察を行っている患者のうち、気管食道瘻発声で日常会話を行っている者数名に研究目的をよく説明したうえで同意を得た患者を研究対象とした。 1、患者に無声子音を発話させながら、震動源を形成する後壁膨隆部から発生時筋電図と新声門上圧、気管内圧を同時記録した。無声子音を発話した際には、新声門が一時的に開大して新声門振動が消失すること、それは新声門を形成する下咽頭収縮筋が一時的に弛緩することで得られることが判明した。すなわち、気管食道瘻発声では、下咽頭収縮筋の筋活動の調節による構音調節機構が存在することが明らかとなった。 2、気管食道瘻発声における欠点の一つとして、瘻孔を通じた誤嚥の可能性がある。これに対し食道筋肉弁を利用した誤嚥防止手術を1983年より施行し誤嚥の機会を著明に減らすことに成功している。この誤嚥防止メカニズムを透視X線検査を用いて明らかにした。すなわち、食塊と食道の拡張を許さない食道筋弁の双方により、気管食道瘻が結果的に絞扼されること、それを助長する甲状咽頭筋の後上方への収縮の2つによるものと考えられた。 3、発生時下咽頭後壁に下咽頭収縮筋による膨隆を生じ、その膨隆から筋放電が得られることは既にわかっているが、発生時だけでなく筋放電が呼期に一致して得られることが判明した。すなわち、純粋な呼吸行為である呼息を行うだけで、新声門となりうるような下咽頭内腔の狭窄部を形成しうることがわかった。しかし、単なる呼吸行為である呼息時に気管孔閉鎖し、気管食道瘻発声と似た状況にしても、実際には音声は生成されないことが判明した。これは、下咽頭後壁の膨隆が呼息時には気管食道瘻発声時に比べて大きくなり、呼気流に対する抵抗が大きくなるためと考えられた。さらに、筋電図検査では呼息時より発生時で筋放電が減弱することから、後壁膨隆を形成する下咽頭収縮筋の筋活動をめぐって、咽頭調節にかわる調節機構が存在することが想定された。
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Research Products
(2 results)