Research Abstract |
当該研究では,in vivoにおける軟骨組織の細胞増殖能や,基質合成能に関する知見を基礎データとして,軟骨組織の代謝に重要な役割を演じている各種の成長因子が,軟骨細胞の機能的な分化のステージとどのような関連をもって発現されるかを,組織化学的な手法を用いて検討を行ってきた。すなわち,平成7年度には,上皮細胞の成長因子であるEGFが軟骨組織にも存在し,このものが成長ホルモンによって調節されていることを報告した(Cell Tissue Res.,278:279-282,1994)。また,生体移植性の軟骨肉腫細胞の発育・増殖には,EGF,FGF,IGF-Iなどの成長因子のはたす役割が重要であることも確認した(第84回日本病理学会,名古屋,1995)。平成8年度には,成長ホルモンが軟骨細胞のプロテオグリカン糖鎖の合成に著しい影響をおよぼすことを明らかにした(Jpn.J.Oral Biol.,38:132-138,1996)。さらに,成長ホルモンは,軟骨組織の増殖層の細胞増殖活性を特異的に誘導することを証明した(J.Histochem.Cytochem.,44:713-720,1996)。このように,軟骨細胞の成長・発育過程におけるin vivoでの細胞代謝系の変化については,基本的データが集積されつつある。現在は,骨系統疾患モデル動物(骨粗鬆症ラット)を使用して,エストロゲン欠乏の軟骨組織におよぼす影響を生化学的,組織化学的に検討しており,この研究結果の一部は第10回国際組織細胞化学会(京都,1996)および第9回軟骨代謝学会(浜松,1997)において発表した。今後は,本研究の目的に的確に対応してゆくために,生体移植性の軟骨肉腫細胞や,培養した胎生期の軟骨組織を使用して,分子生物学的な検討を行ってゆきたい。
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