Research Abstract |
本年度の研究では市販の前装用硬質レジン,試作硬質レジン、金属接着用プライマー,接着剤,金属材料,天然歯を実験材料として使用した.試料の摩耗試験を行うにあたり,2種類の摩耗試験機を採用した.方は主として前装部頬側面の摩耗挙動を想定して試験を行う歯ブラシ摩耗試験機であり,他方は咀嚼,咬合が関与する部分の摩耗挙動を想定して試験を行う3成分系摩耗試験機である.試料は硬質レジン硬化物単体および異種材料と硬質レジンの複合体として製作した.異種材料界面には接着用プライマーや接着剤を使用した.硬質レジンの耐摩耗性の改善を目的として各項目を検討した.摩耗試験後の表面性状は主として走査型電子顕微鏡で観察し,破折,摩耗部位を特定した.また,試料の表面粗さと摩耗の形状は表面粗さ計で記録した.磨耗量は粗さ計の数値を計算機にて読み取り,3次元的に分析した. 1.市販硬質レジンについては重合条件,特に光照射時間,重合温度,表面の仕上げ研磨方法などが耐摩耗性に及ぼす影響について検討した.その結果,本研究において耐摩耗性の改善に有効であった手段は,規定の1.5倍程度とする光照射時間の延長と,100℃,30分程度の後加熱であった. 2.試作硬質レジンについてはモノマー,重合開始剤,フィラーの種類,形態と配合量が耐摩耗性に及ぼす影響について検討した.その結果,3成分紫外線-可視光線重合開始剤を使用した系が,可視光線2成分開始剤の系より,耐摩耗性が優れていた.フィラーは複合マイクロフィラーを使用した系が表面の微小破折が少なかった. 3.接着性プライマーや接着剤を使用すると,異種材料界面の剥離が抑制され,結果的にこの部分の耐摩耗性が向上した.これによって前装部の耐久性が向上すると思われた. 4.2種の摩耗試験機の試験結果を比較すると,材料間の耐摩耗性にはある程度の相関がみられたが,試験後の表面性状に関しては類似性は認められなかった.この結果は,歯ブラシによる摩耗と咬合による摩耗の機構,様式にはかなり相違があり,個別の検討が必要であることを示唆している.
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