1996 Fiscal Year Annual Research Report
高齢者歯科治療の危険度予測が可能な無侵襲循環系モニターの開発に関する研究
Project/Area Number |
07672157
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
大渡 凡人 東京医科歯科大学, 歯学部, 助手 (80194322)
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Keywords | Elderly / Chaos / Heart rate varibility |
Research Abstract |
本研究の目的は"循環系偶発症の危険度予測を可能にするモニターの開発を、心拍変動のカオス解析を用いて行うことにより、循環系合併症をもつ高齢者の安全な歯科治療を実現する"ことである。そこで本年度は決定論的カオスの非線型短期予測という観点から高齢者の不整脈解析を行ない、日本歯科麻酔学会総会で発表した。その概要を以下に示す。 【目的】心臓突然死の多くは致死的不整脈によるが、加齢変化は不整脈を増加させることが知られている。従って、高齢者の歯科治療でも致死的不整脈の可能性は高く、その発生予測は重要である。 一方、心拍変動のカオス解析は循環調節系変動の非線型短期予測の可能性を有するため、不整脈発生の情報を抽出できるかも知れない。そこで、今回、高齢者不整脈のカオス解析を行い、その可能性について検討した。 【対象と方法】高齢者の歯科治療中に発生した不整脈に対し、心拍変動のカオス解析(3 次元アトラクタ、相関次元推定)を行なった。 【結果および考察】 正常心電図ではアトラクタは長楕円形で、比較的高い相関次元が推測された。 これに対して不整脈では、 1.心房細動のアトラクタは白色雑音様で、相関積分の収束性は低かった。多発性の心房性期外収縮も同様のアトラクタであったが相関次元は低いことが推測された。 2.強い呼吸性不整脈のアトラクタは規則的な多角形軌道を示し、2つの相関次元を持つことが予測された。 3.多発性の心室性期外収縮のアトラクタは複数の規則的な軌道を示し、一つ以上の相関次元を持つことを予測させた。 4.長周期の変動を伴う洞性徐脈のアトラクタは紡錘形の軌道を示し、相関次元は低いことが推測された。 以上の結果から、不整脈の種類によりアトラクタは異なり、各不整脈発生機序の差異に関連している可能性が考えられた。従って、心拍変動のカオス解析は高齢者の不整脈予測の一手段として可能性を有すると思われた。
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