1995 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト唾液腺癌細胞に対する部位選択性cAMP誘導体の抗腫瘍活性
Project/Area Number |
07672177
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
吉田 秀夫 徳島大学, 歯学部, 助教授 (30116131)
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Keywords | 唾液腺癌細胞 / c-AMP誘導体 / 抗腫瘍活性 / プロテインキナーゼA |
Research Abstract |
これまでの研究において8-Cl-adenosine(8-Cl-ad)並びに8-Cl-cAMPは、ヒト唾液腺癌細胞HSGの派生細胞であるHSG-AZA1細胞、HSG-AZA3細胞及びヒト腺様扁平上皮癌細胞TYSに対し8-Cl-cAMPでは0.5μM以上の濃度で、8-Cl-adでは1μM以上の濃度で細部増殖は著明に抑制された。また軟寒天中でのこれら細胞のコロニー形成は、未処理対照に比較して8-Cl-cAMPの0.3μM処理および8-Cl-adの0.5μM処理で90%以上の抑制がみられ、HSG細胞に対するのとほぼ同等の細胞増殖抑制、コロニー形成抑制を示すことを明らかにした。培養倒立位相差顕微鏡による細胞形態の観察では、増殖抑制を示す範囲内の各々の薬剤濃度において、培養の経過につれいずれの細胞も円形の浮遊細胞が増加し核の凝集や断裂が認められた。ペトリ皿に付着している細胞ではHSG-AZA1細胞が紡錘形から星状の細胞に変化するものがみられ、TYS細胞は多角形の敷石状の増殖が乱れ円形の不規則な配列を示した。しかし、HSG-AZA3細胞では著明な細胞形態の変化は見られなかった。HSG-AZA1細胞及びTYS細胞には形態的な変化も見られることから細胞分化誘導の可能性も示唆された。細胞内cAMP依存性プロテインキナーゼA(PKA)に及ぼす8-Cl-cAMPと8-Cl-adの影響について[^<32>P]8-azido-adenosine-cAMPを用いた紫外線照射結合法、SDS-PAGE、オートラジオグラフィにより検討した。その結果8-Cl-adの1μM、72時間処理の各々の細胞より得られた可溶性画分、不溶性画分のいずれも分子量47〜54Kdに存在するPKAのRI、RIIサブユニットの減少が認められたが、3単位/mlのadenosine deaminaseを添加した標品では、PKA量の減少は抑制された。8-Cl-cAMPにおいても同様にPKAは減少したが、8-Cl-adより減少は少なかった。これらPKAの減少は各細胞間で有意な差はみられなかった。一方8-Cl-adおよび8-Cl-cAMPは形態的にアポトーシスの特徴である核の断片化を起こすが、DNAの電気泳動パターンについて検索すると、8-Cl-cAMPの5μM・72時間処理および8-Cl-adの5μM・72時間処理により浮遊した細胞、並びにガラス面に付着している細胞から抽出したDNAのいずれもネクローシスのパターンを呈することから8-Cl-adおよび8-Cl-cAMPの処理濃度、処理時間により細胞死の状態が異なることが示唆された。
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