Research Abstract |
近年,高齢化や成人病の増加にともない,歯科臨床の場においても,糖尿病などの慢性疾患を有する患者の受診の増加がみられる。特に急性あるいは慢性の疼痛がストレスとして生体の自律神経系,特に内分泌・代謝系に及ぼす影響については未だ十分に解明されていない。そこで,報告者らは,動物実験としてstoreptozotosin誘発糖尿病家兎を用い,定量化した電気刺激により口腔内疼痛刺激を加え,ストレスの客観的指標として,血中カテコールアミン,糖質系として血中グルコース,さらに脂質系として血中遊離脂肪酸,トリグリセリド,総コレステロール,遊離コレステロール,リン脂質について測定し,ストレス状況と糖質、脂質系代謝との関連性について分析・検討した。 日本白色種家兎(雄,体重2〜3Kg)を用い,対照(C)群と糖尿病(DM)群に分け,DM群にはStreptozotocin(STZ)を投与し,血糖値が180mg/dl以上のものをDM群とした。採血方法は,両群とも16時間絶食後,ネンブタール静脈麻酔下にて,外頸静脈よりカテーテルを挿入し、上大静脈部から経時的に採血した。刺激方法は,ネンブタール静脈麻酔下に顎下縁部より左側オトガイ神経を剖出し,周囲組織と絶縁板により絶縁後,同神経に正電極を接触させ,さらに同側下顎中切歯を無菌的に露髄後,歯髄に針を刺入し,これを負電極とした。十分な安静状態の後,同部より採血し、これを安静時(刺激前)とした。両電極に電気刺激を加え,刺激直後,刺激開始30分後,刺激開始60分後にそれぞれ採血した。 血中カテコールアミンでは,C群に比較してDM群にnorepinephrineの増加がみられた。血中グルコースは,DM群に刺激による増加がみられた。遊離脂肪酸は,C群に刺激による増加と刺激前からのDM群に有意な高い値がみられた。トリグリセリドは,DM群に緩徐な増加がみられた。総コレステロール(T-CHO)および遊離コレステロール(F-CHO)とリン脂質(PL)は,DM群で軽度増加した。また,各測定項目間の相関関係では,DM群でT-CHOとF-CHO,T-CHOとPLの間に,それぞれ有意な正の相関を認めた。
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