Research Abstract |
レーザー照射はエナメル質の耐酸性を向上させ,齲蝕予防効果を発揮するとされている。従来,耐酸性は酸溶液によるCa溶出試験により評価されてきたが,この方法は齲蝕反応を再現できない欠点をもつ。本研究では,歯質-プラーク間の齲蝕学的反応性を重視し,レーザー照射エナメル質に対して乳酸ゲル脱灰システムおよび口腔環境下での齲蝕形成試験を試み,ミネラル分布の変化を評価した。実験にはヒトエナメル質を用い,口腔内試験試料ではプラーク蓄積をはかるためU字型人工裂溝を形成した。はじめに0.1M乳酸ゲルに侵漬し,人工初期齲蝕を形成,これにKr-Fエキシマレーザー,またはNa:YAGレーザーをそれぞれ総エネルギー密度172J/cm^2,100/Jcm^2で照射した。1群は0.1M乳酸ゲルに3週間侵漬し,もう1群は成人6名の口腔内に1か月間固定,プラーク付着状況を維持した。ミネラル分布はIransversal microradiography(TMR)と画像定量法(CAV)で定量評価した。in vitro試料で脱灰深度1し,ミネラル喪失量△Zは,いずれも群間で明らかな違いを認めなかった。口腔内試験の結果,未処理,エキシマレーザー照射およびNd:YAGレーザー照射,各群の脱灰深度1は,それぞれ40±19,33±13,30±6 μm(mean±SD)で,ミネラル喪失量に△Zは順に1,885±897,1,540±783,1,397±363 vol%μmであった。レーザー照射群では脱灰抑制傾向を示したが,3群間に統計学的な有意差を認めなかった。また,再石灰化を示す所見はすべての試料で認められなかった。結論として,エナメル質の齲蝕抵抗性はレーザー照射により変化を受けていない可能性,ならびにレーザーの齲蝕予防効果は最終的には口腔環境下での検討が必要であることが示唆された。
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