Research Abstract |
成人病対策の一環として,食生活等のライフスタイルの変革が、重要であるといわれている。地域保健活動において,食生活の改善のための指導は住民健康診査時、またはその事後指導等の場で行われていることが多い。この場合、食物を摂取するための重要な器官である口腔保健状況や機能を把握し食事指導することは,"食べる能力"を踏まえたより適切な指導を行うことが可能になると思われる。そこで,地域保健活動の中での咬合診断の位置付けと,重要性を明らかにすることを目的に,K県S町の保健センターにおいて1995年度の成人健康診査に参加し,歯科健康診査受診した男性37名(平均年齢50.6歳),女性246名(平均年齢44.9歳)の計283名を対象に,デンタルプレスケールをもちいた咬合診断を実施し,口腔保健状況との関連について解析を行い次の結論を得た。 1)咬合面積(mm^2)の平均値は,男性30.9±20.1,女性19.0±12.5であった。 2)咬合力(N)の平均値は男性807.9±552.7,女性580.0±344.8であった。 3)男女ともに,年齢とともに咬合面積が減少し,咬合力が低下した。 4)男性の場合,咬合面積は処置歯数,健全歯数と,咬合力は喪失指数,健全指数,PI,アイヒナ-インデックス,咬合面積と有意な相関があった。また女性では,咬合面積が喪失歯数,健全歯数,アイヒナ-インデックスと,咬合力は喪失歯数,健全歯数,PI,アイヒナ-インデックスと有意な相関が示された。 5)女性について,咬合面積,咬合力を目的変数とする重回帰分析を行った結果,咬合面積と咬合力を説明する変数として,両者ともにアイヒナ-インデックス,年齢,健全歯数,PIの順に選択された。 以上から,地域保健活動に咬合診断を応用することは,喪失歯,対合状態等の口腔保健状況をとらえるスクリーニング法としての有効であることが示唆された。
|