1995 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07672251
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | 国立予防衛生研究所 |
Principal Investigator |
花田 信弘 国立予防衛生研究所, 口腔科学部, 部長 (70180916)
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Keywords | ストレプトコッカス・ミュータンス / 齲蝕 / プロトン |
Research Abstract |
齲蝕原性細菌Streptococcus mutansの細胞膜に存在するH^+-ATPaseは歯牙エナメル質、象牙質への侵入に関与し、この菌の主要な生体侵入因子であると考えられる。S.mutansのH^+-ATPaseはF_0F_1型であり、ATPの分解エネルギーにより酸(H^+)を排出し、菌体内を中性に保っていると推測されているが、実際には酵素や遺伝子は単離されていない。そこで我々はF_0F_1型H^+-ATPaseの存在について検討した。 S.Faecalis F_0F_1ATPase遺伝子の塩基配列のデータに基づきオリゴDNAプライマーを合成してPCRによる遺伝子増幅を行いS.mutans GS-5株から700bpの遺伝子断片を得た。この遺伝子をクローニング後、^<35>S-dATPでラベルしたジデオキシ法で塩基配列を解析した。 S.mutansから得た遺伝子断片の塩基配列をDNASIS(日立ソフトウェア)で調べると、S.faecalis F_0F_1ATPase遺伝子のβサブユニットの活性中心部分と高いホモロジーが認められた。この結果から、S.mutansのH^+-ATPaseはF_0F_1ATPaseである可能性が高いと思われるがS.faecalisとは配列が異なる領域もあった。 さらに、H^+-ATPaseの役割を知るためこの遺伝子を欠損した変異株の作製を試みた。700bpの遺伝子断片をプラスミドベクターpCRIIでクローニング後、ベクターの両端に存在するEcoRIで切断し、pVA891(大腸菌ーレンサ球菌のシャトルベクターからレンサ球菌の複製開始(ori)領域を除いたベクター)に存在するクロラムフェニコール耐性遺伝子中のEcoRI切断部位に連結した。このH^+-ATPase欠損変異株作製用プラスミドpVA700をS.mutansGS-5株に導入して変異株を得た。現在この変異株の酸産生、耐酸性能の変化を検討中である。 本研究は、齲蝕を細菌のプロトン(H^+)の能動輸送すなわち酸産生と耐酸性に関連するイオン輸送ポンプの機能昂進いう視点で捉えた研究である。また、本研究はフッ化物に次ぐ齲蝕予防新薬開発の基礎研究と位置づけられる。
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Research Products
(1 results)