1995 Fiscal Year Annual Research Report
フラバノン複素環部の環縮小反応を応じた生物活性物質の合成研究
Project/Area Number |
07672290
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
木下 武司 帝京大学, 薬学部, 助教授 (10107386)
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Keywords | フラバノン / 硝酸タリウム(III) / 環縮小反応 / 2-アリールクマラン / カズレノン / 2-アリールベンゾフラン / クメスタン |
Research Abstract |
各種置換基を有するフラバノンにおいて、硝酸タリウム(III)による複素環部の環縮小反応の条件を検討、かつその反応機構の解析を試みた。その結果、反応溶媒としてオルトギ酸メチル-メタノール中で一当量の硝酸タリウム(III)を反応させた場合、フラバノンの5または7位に電子供与性官能基が存在する場合では48〜65%の収率で環縮小反応が起き2-aryl-3-carbo-methoxycoumaran(以下クマラン誘導体と称する)を生成するが、5または7位に電子供与性官能基を持たないそれ以外のフラバノンはほぼ定量的に脱水素反応が起きてフラボンを与えた。この事実は反応中間体と考えられるフラバノンエノレートタリウム付加体においてデタレーションが起きる時、5、7位の電子供与性官能基の存在によりC(4)-C(10)結合のC(3)位への転移がC(2)位の水素の脱離より優先することを意味する。5、7位に電子供与基を持たないフラバノンでも3当量の過塩素酸を加えることで36〜49%の収量で相当するクマラン誘導体を合成することができた。生成するクマラン誘導体の2、3位の配位については、当初反応機構から考えてsynであると考えられたが、実際は反応の過程で3位で配位の反転が起きてantiであることがわかった。従って、当初計画したような3位の反転は必要ないことがわかり、5、7位に電子供与性の酸素官能基を有するフラバノンを出発原料とすることによる前述の利点を含めると、本反応を鍵とするkadsurenoneの全合成は従来法に比べてかなり少ない行程で行える目処がつき、現在は最終階段のキノイド部の構築について検討中である。上述のクマラン誘導体をシントンとする他種生物活性物質の合成については、DDQにより2、3位の脱水素で2-phenyl-3-carbomethoxybenzofuranとし、さらに2'位に酸素官能基を有するフラバノン誘導体から誘導したクマラン誘導体では加水分解によりクメスタンに誘導することができた。
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