1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07672362
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
井出 利憲 広島大学, 医学部, 教授 (60012746)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田原 栄俊 広島大学, 医学部, 助手 (00271065)
|
Keywords | 細胞老化 / 細胞不死化 / 老化遺伝子 / 不死化遺伝子 / cDNAライブラリー / ディファレンシャルスクリーニング |
Research Abstract |
前年度までに、ヒト繊維芽細胞からcDNAライブラリーを作成し、ライブラリーを差ハイブリダイゼーションによってスクリーニングすることによって、老・若細胞や不死化細胞のあいだに発現の差のあるcDNAをクローニングした。その結果、若い細胞で発現が高く、老化すると低下するもの、その逆の発現を示すもの、不死化細胞で発現が高く、有限分裂寿命で発現が低下するもの、その逆の発現をするものなど、多数のcDNAをクローニングすることができた。既知の遺伝子に由来するものもあったが、塩基配列が報告されていない未知遺伝子と、塩基配列断片の報告があるが機能が調べられていないものに注目し、これらの全長cDNAをとった。本年度は、この研究をさらに発展させ、得られたcDNAのなかから注目すべきものを選択して、詳しく解析した。そのなかのひとつN10は、1272塩基対からなり、232アミノ酸からなる蛋白質をコードしていたが、N末端の疎水性アミノ酸配列をもたないこと、プロリン含有量が少ないこと、システインがないことなどから、膜蛋白あるいは分泌蛋白ではないと判断した。他方、親水性に富む塩基性アミノ酸のクラスターと4つのロイシンジッパー様構造をもつなど、転写因子としての性質を備えていた。この遺伝子の発現は、正常細胞でもトランスフォーム細胞でも、分裂回数の増加とともに昴進し、老化関連遺伝子としての可能性を示した。まだ予備的な実験の段階ではあるが、本cDNAを発現ベクターに接続して、若い細胞に遺伝子導入すると、増殖が抑制され、老化が促進される傾向を示した。血清による増殖誘導にさいして発現誘導されるという特徴があり、老化細胞の増殖停止をさせる原因遺伝子のひとつであるp21と似た発現様式であることが特徴的であった。また、研究期間中に、テロメラーゼが細胞不死化に大きな役割をもつことがわかってきたので、テロメラーゼの発現についても研究を展開し、肝臓や胃腸において、正常組織では発現しないが、癌組織のほとんどで発現し、癌細胞が不死化していることを明らかにすることができた。
|
Research Products
(7 results)
-
[Publications] Yasumoto, S., et al.: "Telomerase activity in normal human epithelial cells" Oncogene. 13・4. 433-439 (1996)
-
[Publications] Sugino, T., et al.: "Telomerase activity in human breast concer and benign breast lesions : Diagnostic application in clinical specimens, induding fine needle aspirates" Int. J. Canser. 69・4. 301-306 (1996)
-
[Publications] Nakabayashi, K., et al.: "Loss of amplified telomeric sequences associated with senescence in telomerase-negative SUSM-I cells by introduction of human chromosome 7" DNA Res.(in press). (1997)
-
[Publications] Hirose, M., et al.: "Arabid, useful and uquantitotive method to measure telomerase activity by hybridization protection assay (HPA) connected with telomeric repeat amplification protocol (TRAP)" J. Cancer Res. Oncol.(in press). (1997)
-
[Publications] Iole, T., et al.: "Telomerase in hepatocellular carcinogenesis" Human Cell. (in press). (1997)
-
[Publications] 井出利憲,他: "科学としての内科学" 株式会社 中山書店, 372 (1996)
-
[Publications] 井出利憲,他: "DNAの複製・修復と発癌" 羊土社, 172 (1996)