ポリアミン型薬物の細胞膜透過機構と分子構造相関に関する研究

1996 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 07672414
• Research Institution: HOKKAIDO UNIVERSITY
• Principal Investigator: 井関 健 北海道大学, 医学部附属病院, 助教授 (40203062)
• Keywords: ポリアミン / 消化管吸収 / 腎排泄 / 膜透過 / 膜電位 / 輸送担体 / 刷子縁膜 / 側底膜

Research Abstract

本研究では当初の実験計画に従い、ラット小腸刷子縁膜および側底膜、ならびにラット腎近位尿細管上皮細胞刷子縁膜小胞を用いて、これら薬物の生体膜透過機構の解明について検討を進めてきた。平成8年度は、小腸刷子縁膜透過に関して、ジ、トリおよびテトラアミン型薬物を用い、腎刷子縁膜透過に関して生体内ポリアミンおよびウイルソン病治療薬トリエンチンを用いて検討した。
【小腸刷子縁膜小胞に関する検討】
ジアミン型薬物の脂溶性(オクタノール分配係数)と小腸刷子縁膜透過速度の間には良好な正の相関関係が認められた。また、ジアミン型薬物の膜透過速度は負の拡散電位により増加し、この増加量と各薬物の脂溶性との間には極めて良好な正の相関が認められた。一方、トリおよびテトラアミン型薬物の脂溶性はジアミン型に比べ100分の1以下であるにもかかわらず、ジアミン型薬物と同等の膜透過速度を有し、脂溶性と膜透過速度の間に相関は認められなかった。また、これらの薬物の膜透過速度は拡散電位の影響を受けず、この原因は各薬物の脂溶性が極めて低いためであることが示唆された。さらに、ポリアミン型薬物の膜透過は膜表面電位に強く依存していることが示された。以上の結果は関係学会(日本薬学会)に発表し、雑誌(Journal of Pharmacy & Pharmacology)に公表予定(印刷中)である。
【腎近位尿細管上皮細胞刷子縁膜小胞に関する検討】
自己を基質とした対向輸送の検討より、スペルミンおよびトリエンチンを選択的に認識する輸送担体の存在が示された。さらに、in vivo におけるクリアランス実験より、この担体はポリアミン型薬物の尿細管分泌に寄与していることが示された。これらの結果は関係学会(日本薬学会、生体膜と薬物の相互作用シンポジウム)に発表し、雑誌(Journal of Pharmacy & Pharmacology)に公表予定(印刷中)である。

Research Products

• [Publications] Michiya Kobayashi: "A structure-relationship study on the uptake of aliphatic polymine compounds by rat intestinal brush-border membrane vesicles" Journal of Pharmacy & Pharmacology. (印刷中). (1997)
• [Publications] Michiya Kobayashi: "The mechanism of excretion of trientine from the rat kidney : Trientine is not recognized by the H^+/organic cation transporter" (印刷中). (1997)