1995 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト脳血管内皮細胞に局在するエステラーゼを介する薬物透過の分子機構
Project/Area Number |
07672415
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
細川 正清 千葉大学, 薬学部, 助手 (70181500)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 哲男 千葉大学, 薬学部, 教授 (60092061)
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Keywords | エステラーゼ / ヒト脳 / cDNAクローニング / 薬物代謝酵素 / 血管内皮細胞 |
Research Abstract |
カルボキシルエステラーゼ(エステラーゼ)は、活性中心にセリン残基を有するセリン水解酵素の一種で、エステルやアミド結合を有する化合物を極めて効率良く加水分解することから、医薬品、農薬、食品添加物や環境化学物質などの多くの化合物の代謝・毒性発現機構に重要な役割を果していると考えられている。これまで本酵素に関しては、主に肝を中心として詳細な検討が行われてきているが、薬物の代謝・毒性を調べるうえでは、肝以外の臓器に関する検討も重要であると考えられる。特にエステルやアミド結合を有する薬物の中枢神経系への移行を考慮した場合、脳に存在するエステラーゼの局在部位や特性が脳への移行性に極めて重要であることが予想される。そこで本研究においては、ヒト脳に局在するエステラーゼについて、特にヒト肝エステラーゼと比較検討した。その結果、ヒト脳にはヒト肝と特性の極めて類似したアイソザイムが存在することが明らかとなり、さらに免疫組織化学的手法によりこのエステラーゼが血管内皮細胞に局在していることも確認されたことから、本酵素が薬物の脳移行性に関与している可能性が示唆された。そこで、ヒト脳と類似した構造を有することが考えられるヒト肝に存在するエステラーゼのcDNAクローニングを行ない配列を決定し、さらにヒト脳についてもこの肝エステラーゼと構造的に類似したエステラーゼが存在するものと考え、ヒト肝エステラーゼのcDNAをプローブに用いてスクリーニングを行った。その結果、エステラーゼの活性中心であるSer近傍をコードすると考えられる陽性クローンが得られた。今後は、このクローンの塩基配列を決定すると共に、哺乳動物細胞での発現を行なうことによりヒト脳のエステラーゼの薬物透過における役割を明らかにすることが可能となり、プロドラッグの脳移行性を考慮した薬効・毒性を検討するための新しい試験法として資するところが多い。
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