1995 Fiscal Year Annual Research Report
心血管障害におけるアンジオテンシンIIの役割に関する分子薬理学的研究
Project/Area Number |
07672471
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
金 勝慶 大阪市立大学, 医学部, 助手 (10195414)
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Keywords | アンジオテンシン / 心肥大 / 降圧薬 / 心不全 / コラーゲン / 遺伝子 / 心筋梗塞 |
Research Abstract |
今回の研究では、心肥大、心室リモデリング、心不全におけるアンジオテンシンIIの役割を分子レベルで検討した。 1,22週令の脳卒中易発症高血圧自然発症ラット(SHRSP)に、アンジオテンシンIIタイプ(AT1)受容体拮抗薬、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、α-交感神経受容体遮断薬、β-交感神経受容体遮断薬、カルシウム拮抗薬をそれぞれ、同等な降圧効果を示す用量を10週間経口投与し、心肥大退縮効果、心筋細胞の形質変換さらに遺伝子発現に対する効果を比較検討した。そして、同等な降圧効果にもかかわらず、AT1受容体拮抗薬とACE阻害薬は他の降圧薬よりも有意に、SHRSPにおける心肥大退縮効果、心筋の形質変換抑制効果さらにコラーゲン等の細胞外マトリックスの遺伝子発現抑制効果が強かった。 2,左冠状動脈結紮により心筋梗塞を作製したラットを、AT1受容体拮抗薬投与群、ACE阻害薬投与群、及びコントロール群の3群に分けた。AT1受容体拮抗薬あるいはACE阻害薬投与により、心筋梗塞による心肥大並びに心不全の発症は著明に抑制されることがわかった。また、これらの薬剤は、著明な降圧をきたさない用量で、心筋細胞の胎児型への形質変換を抑制するだけでなく、コラーゲン遺伝子の発現増加を抑制し、さらには心不全の発症に重要とされるCa-ATPase遺伝子発現の低下を抑制することを証明した。 このように、アンジオテンシンIIは、AT1受容体を介して、高血圧や心筋梗塞によって生じる心筋肥大に関与するだけでなく、心筋細胞の形質変換や、間質の線維化にも関与する。また、Ca-ATPase遺伝子発現の低下にも関与し、心不全の発症にも重要な役割を演じていると考えられる。
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