1995 Fiscal Year Annual Research Report
ラットで脊髄損傷後現われる自律性膀胱の発現機序についての研究
Project/Area Number |
07672477
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Research Institution | Hokuriku University |
Principal Investigator |
紺谷 仁 北陸大学, 薬学部, 教授 (40102743)
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Keywords | 自律性膀胱 / 脊髄損傷ラット / 仙髄排尿中枢 / 骨盤神経 / 下腹神経 |
Research Abstract |
1.研究目的 ヒトで脊髄損傷を受けると膀胱運動の消失とその1-2カ月後自律性膀胱(autonomic bladder)が発現することが知られている。この脊髄損傷後に現れる自律性膀胱の動物モデルをラットで作成することを試みた。いったん消失した膀胱運動が発現してくるには、1)仙髄排尿中枢の活性、2)骨盤神経節の自発的興奮、3)交感神経(下腹神経)による膀胱の興奮的支配、などの可能性が考えられる。これらの点について検討した。 2.実験結果と考察 脊髄損傷モデルとして仙髄排尿中枢が存在するL6より上位の部位(L3-4)に限定して脊髄を不可逆的に損傷させたラット(SIラット)をリ-ジョンジェネレータで作成した。損傷2週間後から尿失禁状態の回復が見られた。そこで損傷30日後urethane麻酔下に膀胱内圧曲腺を記録した。この仙髄排尿中枢からの神経支配の有無や、節前神経の除神経による骨盤神経節の変化を調べるために、骨盤神経をL6-S1の椎骨から出た部位で両側に切断したラット(PRラット)で、膀胱内圧曲線を記録して比較した。 膀胱内圧の上昇によりS1ラットでは反射性の繰り返す収縮運動が現れたが、PRラットの膀胱は無反応のままであった。これらラットの膀胱反応は、ヒトで脊髄損傷(核上型)後に見られる自律性膀胱の運動と、骨盤神経損傷(核下型)後の膀胱伸展などに無反応な状態の各々に相当し、動物モデルとして有用と考えられた。ネコでの自律性膀胱の発現機序として、骨髄神経節での新たな神経連絡が構築されて下腹神経が抑制性調節から興奮性支配に変化したためと報告がある。しかし今回のラットでの結果では骨盤神経節の変化や下腹神経の関与は無く、脊髄上位排尿中枢からの支配の消失により仙髄で骨盤神経細胞体の反射性亢進が起きたためであることが解った。
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