心理的ストレスによる心臓機能障害の発生機構に関する基礎的研究

1996 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 07672479
• Research Category: Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
• Research Institution: Daiichi University, College of Pharmaceutical Sciences
• Principal Investigator: 原 千高 第一薬科大学, 薬学部, 教授 (70112266)
• Keywords: 循環器疾患 / 不整脈 / 心筋梗塞 / 脳卒中易発症高血圧自然発症 / SHRSP / ストレス / 不安 / 病態モデル

Research Abstract

循環器疾患、とくに心筋梗塞や脳卒中の治療薬開発は、我が国の保険医療に於いて重要な課題である。これらの薬物開発にあたって、動物による新薬の薬効評価系の必要性は論を待たないところである。脳卒中は脳卒中易発症高血圧自然発症ラット(SHRSP)があり、その有益性がよく報告されているところである。しかしながら、適切な心筋梗塞の自然発症動物モデルはまだ確立されていない。私共は、SHRSPが脳血管の変性により脳卒中症状を発症するのであれば心臓の冠血管にも変性をきたしている可能性があり、したがってSHRSPを心筋梗塞の病態モデルとして応用できるのではないかと考え、その確立を志している。もしそうであれば、なんらかの負荷を心臓にかけることにより、心電図をモニターすれば不整脈という形で、あるいは心電図上で、なんら生体に侵襲を加えることなく心臓の病的状態を観察できるものと考えた。その負荷として一番最適と思われるものは、心筋梗塞や突然死の誘因として心理的ストレスの関わりが指摘されているところから、心理的ストレスであろう。
そこで、先ず平成7年度にラットを用いた二つの心理的ストレスモデル、コミュニケーション・ボックス法とconditioned fearモデル、を用いて心電図を測定することにより心理的ストレス負荷による心機能に対する病的影響と病態モデルとしての応用を調べた。コミュニケーション・ボックス法による社会的心理ストレス負荷ラットの心電図変化をテレメトリーシステムを用いて調べると、心拍数に動揺が認められ、明らかにR-R間隔に変動が認められ、心機能の乱れを惹起しているものと考えられた。一方、conditioned fearモデルでは、communication box法と異なり、心電図上の動揺は認められず、循環器疾患のモデルとしての応用より、恐怖症のモデルとしての応用が妥当と考えられた。したがって、平成8年度ではSHRSPを研究対象として、communication box法によるストレス負荷により不整脈などの心電図異常を発現するかどうか、血圧の変化とともに調べた。その結果、血圧が230mmHgを超えた12週齢あたりから、ストレス負荷と一致して期外収縮が観察された。これらの結果は、SHRSPを用いてストレス負荷により不整脈の出現を確認し、その後不整脈の頻度、心臓の病理学的変化、臨床検査学的変化あるいは死亡率を指標にして心筋梗塞の薬効評価を行えば、前臨床薬効評価系が確立できるものと確信する。最終年度である平成9年度、申請中の基盤研究B(展開)により、これらの点を明らかにして行きたい。

Research Products

• [Publications] 原 千高: "Communication box法による社会的心理ストレス負荷ラットの心拍数変動の特性" 日本薬理学雑誌. 107(2). 59- (1996)
• [Publications] Ueno,S.: "Characterization of ECG changes of rats with sociopsychological stress induced by the communication box method from aspects of cardiac neurosis." The Japanese Journal of Pharmacology. 71(Suppl.). 270- (1997)
• [Publications] 原 千高: "脳卒中易発症高血圧自然発症ラット(SHRSP)の心電図異常:Communication box法による社会的心理ストレス誘発性期外収縮" 日本薬理学雑誌. 109(2). 69- (1997)