Research Abstract |
H7〜H8年度では血栓-血管機能に関連した基礎的・臨床的検討を行った。すなわち,1-酸化窒素(NO)の抗血小板作用をin vitroで検討した結果,NOの凝集阻止作用は血小板内C-GMP上昇を介することを確認した。選択的PDE阻害剤でNOの凝集阻止作用が増強されること、PGによるNO作用の弱いことは,これを支持した。トロンビン刺激時,c-GMPは細胞内で低く、細胞外で上昇したが,このことはc-GMPの血小板活性化のnegative feedback説を支持しないと考えられた。 2.血小板膜分画GP IIb/IIIaに対する抗ヒトGP IIb/IIIaマウスモノクローナル抗体の作用態度を,in vitroでしらべたが,(1)全血への抗体添加では,高濃度においても血小板数,フィブリノゲン量に変化はなかった。(2)ADP凝集に対しては、抗体濃度依存性に抑制を認めた。(3)その他のagonists(collagen,epinephrine,thrombin,PAF,arachidonate-AA)に対しては,AA凝集を除いていずれも凝集阻止的であった。(4)抗フィブリノゲン抗体と併用すると,凝集は相加的に阻止された。(5)Fibronectin,Fibronectin fragmentとの併用でも凝集阻止は増幅された。(6)ASAあるいはTiclopidine投与例では,本抗体により,凝集はきわめて高度に抑制された。これらより,本抗体を抗血小板薬として(キメラ化して)臨床応用が試みられつつあるが,凝集を確実に阻止する反面,出血副作用が懸念されることを明らかにした。 3.血小板活性化時の凝集能と血小板[Ca^<2+>]i濃度の変化を,正常者と血栓性疾患患者(主として脳梗塞例)で比較したが,患者では凝集能(ADP,coblagen,epinephrine)は,ともに有意に高値であった。しかし,[Ca^<2+>]iは正常者に比し,患者で高い傾向はあるものの,有意差はなかった。 4.既報の静脈圧迫試験(VOT)を用いて正常者,患者(とくに膠原病)で血管内皮細胞由来の生理活性物質(t-PA,PAI-1,thrombomodulin-TM)およびFDPの変動をしらべた。その結果,VOT後,(1)FDP-DよりFDP-Eが鋭敏であった。(2)t-PAは正常者>患者,PAI-1は正常者≒患者,TMは患者で上昇したが,有意差はなかった。(3)血管炎を有する患者では,t-PA,PAI-1ともに高く,かつt-PA>PAI-1の関係にあることを明らかにした。
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