1996 Fiscal Year Annual Research Report
被虐待児のケアニーズのアセスメント指標開発とその効果測定
Project/Area Number |
07672524
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
鈴木 敦子 大阪大学, 医学部, 教授 (50196789)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
楢木野 裕美 大阪府立看護大学, 看護学部医学部, 講師 (90285320)
鈴木 泰子 大阪大学, 医学部, 助手
小山田 浩子 大阪大学, 医学部, 講師 (90233626)
鎌田 佳奈美 大阪大学, 医学部, 助手 (30252703)
堀井 理司 大阪大学, 医学部, 講師 (10243255)
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Keywords | 被虐待児 / ケアニーズ / 看護ケアアセスメント / 感情レベル / 認識レベル / 入院ケア / 愛着一攻撃型 / 愛着一受容型 |
Research Abstract |
「入院している被虐待児に対する看護者のアセスメントとケアの実態とその問題点を明らかにする」との今年度の研究目的にそい、平成7年度の調査をもとに、被虐待児の入院の有無に焦点を当てた分析と参加観察による被虐待児のケアの実態を把握した。調査対象1070名のうち、被虐待児の入院があるとする者は380名(35.5%)で、入院がないとする者は690名(65.5%)であった。被虐待児の入院に際して得ている情報は他の入院児一般のものと大差なく、特に「計画出産」「親の被虐待歴」は30%の低率であった。しかも、被虐待児の入院があるとする群は、「母子分離」「夫婦の相補性」「ペアレンティングの問題」「経済問題」などの重要な情報の収集率が、入院がないとする群より5〜20%低かった。同様の結果は、観察や実際の関わりにも見られ、両群50%強を示した体重に関する情報も、観察や発育曲線の評価になると30%を切り、子どもの安全感や基本的信頼感の形成につながる生活リズム面への観察や依存欲求を示す情緒・対人関係面への観察も後者が高率であった。被虐待児が特別の配慮を必要とするケア提供も両群とも10〜30%の低率で、しかも適切な関わり方はここでも後者が高かった。子どもの虐待への関心度の高さは昨年度の分析で明らかにしたが、被虐待児が必要としているケアに対する認知や実際のケア内容には反映していないし、しかも実際のケアにあたっている群の方が、当たっていない群よりも全体的に適切な情報収集、観察、関わりがなされていないことが判明した。つまり、小児看護での被虐待児のケアは感覚レベルの状況であり、認識レベルの段階に至っておらず、ケアの実際は他の入院児のそれと大差がないのである。あわせて行った被虐待児のケア経験の有無による分析でも、「度々ケアを経験した」とする38名のみが、認識レベルに達した具体的なケア内容を示していた。また参加観察での3事例の分析でも、そこには愛着一攻撃型のケアは少なく、愛着一受容型のケアがなされていたが、その受容内容は愛着一回避から始まっている傾向が見られた。これらの結果から、感情レベルの認識を認識レベルに深めるための具体的なアセスメント指標の方向が示唆された。
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