1996 Fiscal Year Annual Research Report
茶成分の生理機能発現における一酸化窒素の役割に関する栄養生化学的研究
Project/Area Number |
07680033
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Research Institution | OSAKA CITY UNIVERSITY |
Principal Investigator |
湯浅 勳 大阪市立大学, 生活科学部, 教授 (50094488)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大谷 貴美子 大阪市立大学, 生活科学部, 助教授 (60148632)
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Keywords | 茶ポリフェノール / 一酸化窒素 / ポリアミン / 癌遺伝子 / チロシンリン酸化 / 抗癌作用 / 肝障害保護作用 / 栄養生化学 |
Research Abstract |
前年度の研究において、各種茶ポリフェノールのうちエピガロカテキン(EGC)が強い抗癌作用を持つこと、またその作用はポリアミン代謝の抑制を介していることを明らかにした。今年度はさらに詳細な作用メカニズムを調べるために癌遺伝子および細胞内シグナル伝達に及ぼす茶ポリフェノールの影響について検討した。その結果癌遺伝子の一種であるc-fosの発現に影響を及ぼすことが明らかとなった。また、シグナル伝達のうち細胞内の増殖と関連しているチロシンのリン酸化について調べたところ、茶ポリフェノールはタンパクのチロシン残基のリン酸化、特に分子量4.2万と4.5万ダルトンのタンパクを時間および濃度依存的に促進することがわかった。これらのタンパクがそのような機能をもつかは今後の検討課題である。茶ポリフェノールが癌遺伝子やチロシン残基のリン酸化に変化させるという知見は新しいものであり茶の抗癌作用の解明に重要な手がかりを与えるものと考える。次に細胞内メッセンジャーとしての役割を持つ一酸化窒素との関係について検討した。一酸化窒素は生体内において血圧の上昇を抑制する血管内皮細胞由来弛緩因子として発見され、その後血小板凝集阻害、マクロファージや好中球の細胞毒素などいろいろな役割を果たしていることが明らかにされている。本研究では一酸化窒素のこれらの生理作用が茶成分の生理作用とよく似ていることに着目し研究を行った。その結果一酸化窒素生成量と抗癌作用との間に相関関係が認められ、お茶のいくつかの生理作用に一酸化窒素の関与が示唆された。さらに本研究ではお茶の新たな生理作用を見つけるために初代培養肝細胞を用い茶成分による肝細胞傷害保護作用について調べた。その結果エピガロカテキン(EGC)とエピガロカテキンガレート(EGCG)の2種のポリフェノールが強い保護作用を有することがわかった。そしてこの保護作用は肝細胞のタンパクチオール基の保護を介しておこることを明らかにした。
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