Research Abstract |
実験1:環境温(T_a)が中立温域から漸次上昇(28→40℃)または下降する(30→17℃)条件下(いずれも60分暴露)で児童(B群:10歳前後,n=7)・若年成人(Y群:22歳前後,n=9)・高齢者(O群:70歳前後,n=8)の皮膚血流反応(LDF)を身体5部位で比較し,その発育・老化特性を検討した。(1)T_a上昇時;LDFはいずれの群においてもT_aの上昇に伴い増加したが,その増加は暴露後半において顕著だった。B群のLDFはY群に比し,胸部で有意に高く,逆に大腿で有意に低かった。また,暴露後半,前額においてB群のLDFの増加の程度がY群より有意に大きく,この反応は局所発汗量の増加と反応した。O群は前額・胸・手中指ではY群と同等のLDFを示したが,背・大腿では有意に低かった。(2)T_a下降時;いずれの群もT_aの下降に伴いLDFが有意に低下した。LDFは暴露中B群がY群に比し,前額と手中指で有意に低く,胸と背で有意に高かった。O群はY群に比し,背・大腿で有意に低く,前額で有意に高く,胸と手中指では群差がみられなかった。以上の結果,暑熱・寒冷刺激に対するLDF反応は発育・老化に影響され,その程度は身体部位で異なることが確認された。 実験2:上記実験とほぼ同一被験者の前額,胸,背,前腕,大腿部(約20cm^2)を各々40分間局所加温し,42℃の皮膚温を保持させた際のLDFを連続的に測定した。LDFはいずれの被験者も20-25分目まで増加し,その後一定値を保ったため,35-40分目のLDFを各人の最大皮膚血流量(LDF_<max>)とした。LDF_<max>は,いずれの部位においてもB群 vs.Y群およびO群 vs.Y群に,いずれの年齢群においても身体部位間に,それぞれ有意な差は認められなかった。これらの結果は,上記暑熱・寒冷実験でみられたLDFの発育・老化特性は,皮膚血管それ自体の老化変性または未発達さに起因するものではなく,自律神経を介して応答特性を反映している可能性が示唆された。
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