安静時における運動細胞興奮性とその随意運動時の変化量の関係について

1995 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 07680126
• Research Category: Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
• Research Institution: Nagasaki University
• Principal Investigator: 船瀬 広三 長崎大学, 医療技術短期大学部, 助教授 (40173512)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 西平 賀昭 筑波大学, 体育科学系, 助教授 (20156095)
• Keywords: 運動細胞プール興奮性 / H反射 / 随意運動 / 相反抑制 / シナプス前抑制

Research Abstract

当初研究計画で挙げていた「被験者個々の安静時ヒラメ筋運動細胞(MN)プール興奮性と足関節底屈時におけるH反射振幅変化量の関係」については底屈条件下における実験結果の個体内再現性が得にくいこと(これはH反射導出筋と随意収縮を行う筋が同一のため、電気刺激が入るタイミングと随意収縮に伴うヒラメ筋MNの発火頻度の関係から、H反射の振幅変化が非常に大きくなってしまうことによるものと思われる)から、実験計画を見直し、随意収縮条件を背屈(拮抗筋収縮)のみとした。まず個体内における試験H反射サイズに依存した条件刺激効果の量的差異が、個体間においても存在するか否かを確かめるために、各被験者のヒラメ筋におけるHmax/Mmax(通常このサイズが試験H反射として用いられる)に対する一定の抑制性入力(最大随意収縮の10%での持続性足関節背屈)がもたらす量的効果について調べた。その結果、Hmax/Mmaxが大きくなるにつれて背屈による試験H反射の抑制量は増加し、試験H反射が最大M波の50%を越える当たりから減少に転ずるパターンが示された。すなわち、個々の被験者における試験H反射サイズに依存した条件刺激効果の量的差異が認められた(Perceptual and Motor Skills,in press)。したがって、個人間における条件刺激効果量の比較には、試験H反射サイズ(プール内で対象とするサンプルMN)を個人間で一定にすることが必要となる。この結果を踏まえて、10%MVCの持続的な足関節背屈にともなうヒラメ筋MNプールの抑制量の個人差と、各被験者の安静時ヒラメ筋MNプール興奮性(Hslp/Mslp:先行研究で提唱した新たな指標)との関係を調べた。その結果、安静時MNプール興奮性の低い被験者ほど、拮抗筋収縮による抑制を大きく受けることが観察された。このような結果をもたらす要因を探る実験として、アキレス腱への振動刺激を用いて安静時のヒラメ筋MNへのシナプス前抑制を活性化させ、その抑制量と安静時MNプール興奮性との関係を調べたところ、シナプス前抑制による抑制量の大きい被験者ほど安静時のヒラメ筋MNプール興奮性が低いことが観察された。これは、拮抗筋収縮による相互抑制量と安静時のヒラメ筋MNプール興奮性との関係と一致しており、安静時におけるシナプス前抑制の程度の差異(おそらく安静時のヒラメ筋MNプール興奮性の高低を決める有力な要因)が、一定の強度における拮抗筋収縮によってもたらされる抑制量の個人差を生み出す要因になっている可能性が示唆された(投稿準備中)。また、本研究の副産物として、従来からの安静時MNプール興奮性の指標であるHmax/Mmaxと先行研究で新たに提唱したHslp/Mslpの感度の違いを、本学作業療法学科の協力を得て、痙縮患者と健常者で比較したところ、Hslp/Mslpの感度の高さが確認された(Neuroscience Letters,in press)。このことは、臨床の場にける痙縮の客観的評価の手段として役立つものと考えられる。

Research Products

• [Publications] Funase K,Higashi T,YoshimuraT Imanaka K,Nishihira Y: "Evident difference in the excitability of the motoneuron pool between normal subjects and patients with spasticity assessed by a new method using H-reflex and M-response" Neurosci Lett. (in press).
• [Publications] Funase K,Imanaka K,Nishihira Y: "Inhibition of the soleus H-reflex during dorsiflexion on individual differences in maxmal soleus H-reflex as a test reflex" Perceputual and Motor Skills. (in press).
• [Publications] Nishihira Y,Araki H,Funase K,Imanaka K,Hatta A: "Frontal N30 potemtial following a sustained voluntary movement" Perceptual and Motor Skills. 81. 441-442 (1995)
• [Publications] Funase K,Imanaka K,Nishihira Y: "Excitability of the soleus motoneuron pool revealed by the developmental slope of H reflex as reflex gain" Electromyogr Clin Neurophysiol. 34. 477-489 (1994)
• [Publications] Funase K,Imanaka K,Nishihira Y,Araki H: "Threshold of the soleus muscle H-reflex is less sensitive to the change in excitability of the motoneuron pool during plantarflexion or dorsiflexion in humans." Eur J Appl Physiol. 69. 21-25 (1994)
• [Publications] Imanaka K,Funase K,Nishihira Y: "Reconsidering the 90° head-rotation used in neuropsychological research : Are there reflexive rather than hemispatial effect?" Neuropsychologia. 32. 569-578 (1994)