Research Abstract |
水泳動作における身体各部の動きの解析を行った.被験者は,大学生選手,中学生選手,スイミングスクールに通っている者,素人とした.これら被験者にはクロールで泳いでもらい,TVカメラで選手の映像を水中の側方から撮影した.撮影した映像をコンピュータへ取り込み,身体各部の時間的変位を2次元座標として求めた.得られた身体各部の座標値から,身体各部がどのような動きをしているのかを計測した.特に,腕の動作(プル)として,“肩-肘-手首-指先"を結ぶラインを,体の軸の動きとして,“首-腰"を結ぶラインを,さらに,足の動作(キック)として,“腰-膝-足首-つま先"を結ぶラインを,それぞれ相対表示してその動作を解析した.また,身体各部の速度変化および角度変化を解析した.角度変化は,肘,手首,膝,足首をそれぞれ中心とした角度を採用した.その結果,腕の動きについては,選手では,肘および手首の急激な角度変化はなく,指先は円に近い軌跡を描き,肩の真下で最も深い位置を通っていた.その他の被験者では,前後方向に長い楕円形をしており,必ずしも,指先が肩の真下で最も深い位置を通ってはいなかった.これは,体力的な要因も影響しているものと思われる.体の軸の動きでは,大学生選手,中学生選手の軸は上下の動きが少なく,水平に近いポジションをとっていた.それに対して,素人では,上下の動きが大きくまた腰が沈んでいた.腰が沈むと,進行方向から見た投影断面積が大きくなり,水の抵抗が増大する.足の動作としては,膝の角度が,選手では上から下へのダウンキックの前半ではやや曲がっている程度であり,後半にはほぼ180度になっていた.アップキックについてもほぼ180度を保っており,また速度も一定していた.それ以外の被験者では,角度の変動や速度変化が大きいことが分かった.解析の結果,効率の良いと思われる動きや無駄な動きを観測することができた.今後の研究の展開としては,より良いフォームが水泳の推進力にどのように結びついているのかを調査することが必要である。
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