1995 Fiscal Year Annual Research Report
近世奈良盆地における綿作推移の地域差と灌漑条件との関係に関する歴史地理学的研究
Project/Area Number |
07680164
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
岩崎 公弥 愛知教育大学, 教育学部, 助教授 (80135392)
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Keywords | 大和盆地 / 近世綿作 / 綿作率 / 溜池灌漑 / 綿作率の地域差 / 田畑輪換 / 節水農法 / からけ作 |
Research Abstract |
本研究の目的は、近世の大和盆地を対象として、地域内の綿作の変化を明らかにし、その地域差を究明することにある。さらにそれらの地域差をもたらした要因について考察をするが、水利条件の地域差が強く関わっていると思われので、仮説としては、溜池灌漑をはじめとする灌漑条件の時代的推移(いつ溜池が造られたのか、それによってその地域の水利条件がどのように変化したのか)と綿作率の変化との対応関係を探ることに力点を置くものである。 大和盆地では、絶対的な水不足を解消するために近世を通じて各地で溜池が築造され、それによって田の水利条件を向上させてきた。水利条件の好転は「からけ作」と呼ばれる節水農法としての田畑輪換を解消させていった。それによりそれまでの田方綿作地が稲作地へと再転換させられ、一方、遅くまで綿作が継続される地域では、容易には水利条件の好転が達成されなかった。以上を仮説として平成7年度の研究を進めてきた。 平成7年度は、大和盆地における村別の綿作データの収集を行った。盆地の全域についての綿作データはかなりの程度収集できた。その結果、村によっては、18世紀初期からの綿作面積の推移が判明し、田方綿作の推移には、a)早期衰退型 b)後期衰退型 c)末期一時増加型 d)維持型(綿作低率型・綿作高率型)などのタイプが存在することが確認された。これについては、各地にある歴史資料館などでの資料収集を行った。併せて各村別の溜池築造状況を、奈良県庁が所蔵する明治39年の「奈良県溜池整理調査書」により調査した。溜池灌漑の状況については、明治末期における旧町村別の溜池灌漑率・貯水深・溜池規模などの分布図を作成した。今後は、個別事例に即して、仮説を検証していく必要がある。
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