1995 Fiscal Year Annual Research Report
明治時代以降の日本人の動物観に関する文化地理学的研究
Project/Area Number |
07680177
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | Nara University |
Principal Investigator |
高橋 春成 奈良大学, 文学部, 教授 (70144798)
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Keywords | 文化地理学 / 明治時代以降 / 日本人の動物観 / 宗教 / 都市化 / 人間と野生動物の共生・共存 |
Research Abstract |
まず、日本人の動物観にかかわる文献的資料の入手とその分析を行なった。入手した主な文献的資料類は約100点で、それらから日本人の動物観にかかわる項目の抽出とその整理・分析を行なった。これらの資料が扱っている時代の範囲は、縄文・弥生時代から奈良・平安時代を経て江戸時代に至るまでであり、従来指摘されてきた日本人と動物との間の親密性や連続性を再検討した。 次に、近畿地方を対象に、アンケート調査と聞き取り調査を実施し、その分析をすすめた。当調査は、大都市部の住民(大阪市)、特に近年野生動物による農林業被害が深刻な地域の住民、古くから野生動物との間に持続的なかかわりがみられる地域の住民に対して行なった。対象とした野生動物は、シカ、ツキノワグマ、イノシシ、サル、キツネ、タヌキ、オオカミ(絶滅)の7種である。調査項目は、日本人の動物観の基層と考えられる動物との親密性を示す霊魂の認識や殺生・肉食の忌避、各野生動物のイメージ、野生動物に対する価値認識などである。 その結果、大都市部の住民や若者層などに霊魂の認識や殺生・肉食の忌避傾向の後退がうかがわれるが、総じて動物との連続性の存在が認められた。しかし一方で、近年の被害地域では、加害動物に対する高い害獣視と殺生容認がみられた。また古くから野生動物との間に持続的なかかわりがみられる地域では、他地域よりも動物との連続性が高かった。なお、大都市部の住民や若者層などでは、マスコミや雑誌などの情報の影響が各野生動物に対するイメージや価値認識の形成に関与しているようである。
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