1996 Fiscal Year Annual Research Report
近世坂東観音巡礼ルートの実態-関東・甲信地方からの参詣を対象として-
Project/Area Number |
07680181
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Natural History Museum and Institute, Chiba |
Principal Investigator |
白井 豊 千葉県立中央博物館, 環境教育研究科, 学芸研究員 (30250153)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉村 光敏 千葉県立中央博物館, 地学研究科, 科長 (80250132)
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Keywords | 坂東観音巡礼 / 旅日記 / 納経帳 / 巡拝塔 / 石造文化財 |
Research Abstract |
昨年度に引き続き、関東地方と甲信地方における近世の坂東巡礼の実態と地域差を解明するという目的から、旅日記・納経帳および石造文化財の資料調査を継続した。 坂東巡礼の旅日記の残存を確認できるケースは、伊勢参宮に比べ著しく少ないが、その内容を今年度調査した栃木県に残る道中記二件と、長野県に残る納経帳一件の対比で述べる。栃木県のうち一件は、伊勢参宮、西国札所など遠隔地への旅の途中に坂東札所の数か寺を巡っている。その際、同じ観音札所であるが西国三十三か所はその全てを巡っている。他の一件は坂東を中心に巡っているが、その全てではなく半数程の寺と成田山、香取神宮などとを併せる旅程をとっている。一方、長野県に残存したいた納経帳では、坂東札所のほぼ全部と秩父札所の全部を一挙に巡る旅程をとっている。坂東巡礼は、関東在住者にとっては、遠距離の旅と併せて巡るか、数回に分けて巡る中距離の旅であり、信州在住者には、おそらく一生に一度の遠距離の旅であることを再確認した。 ところで、坂東道中記の残存が少ない理由として、関東在住者にとってはいつでも行ける中距離の旅であることから記録に残すことが少ないと考えていたが、今年度の調査過程でこれに加えて、残存を確認しにくい理由として、次の様なことに気付いた。すなわち観音札所巡礼は、個人的な信仰の要素が強く、伊勢参宮のように村全体に関係する講によるものと比べ、その記録が村方文書などの公的なものと一緒に残ることが少ないということである。納経帳となれば、その傾向はさらに強く長野県の白馬村でも仏壇のなかに納められている例を聞いた。 なお、今年度観音札所巡礼に関する論文をサーチする過程で、出羽三山信仰と百観音札所巡礼の重層性を報告する論文があった。この点は、出羽三山供養塔・巡拝塔など石造文化財の継続調査で確認していきたい。
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