1995 Fiscal Year Annual Research Report
沖縄のサンゴ礁における炭素循環と炭酸カルシウム生産
Project/Area Number |
07680559
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
大出 茂 琉球大学, 理学部, 助教授 (20117568)
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Keywords | 沖縄 / サンゴ礁 / 炭素循環 / 二酸化炭素 / 炭酸カルシウム |
Research Abstract |
沖縄のサンゴ礁における炭素循環と炭酸カルシウム生産量の測定を糸満市の西15kmにあるルカン礁において行った。ルカン礁は沖縄本島から離れ、アイソレートした場所にあるため、陸地の影響をほとんどうけない、小さな環礁である。サンゴ礁海水中のカルシウム、アルカリ度、pH、全炭酸および二酸化炭素分圧の精密分析法を確立した後、ルカン礁のリ-フフラット(東海岸)において、サンゴ礁海水を約20分毎に採水、実験室において上記項目の化学分析を行った。測定したデータをもとに、昼間のネット有機炭素生産、夜間の呼吸量および石灰化量を計算した。その結果、10月の昼間のネット有機物生産速度(CP)は9.3ミリモル、石灰化速度(CA)は5.3ミリモルであった。また、夜間の呼吸速度(R)は6.0であり、石灰化速度はほとんど0であった(測定値は、1平方メートル1時間あたりの炭素量である)。昼間のCP/CAは、1.8(9.3/5.3=1.8)という値が得られる。昼間は石灰化によって放出された二酸化炭素はすべて光合成によって有機物として固定されていることを意味している。また、海水のpHの値も8.2から8.6へ大きく変化していることから、昼間の石灰化によって二酸化炭素はサンゴ礁から大気へ放出されることはないと結論できる。しかし、夜間は呼吸による有機物の分解によって、pHの値は時間とともに小さくなり、Rの値に示すように、サンゴ礁は大気へ二酸化炭素を放出していることになる。次に、1日の収支を0.6ルールを考慮に入れて計算する。ただし、昼、夜の時間を12時間として、CP、CA、Rはそれぞれ一定値とした。以上の仮定から、10月のサンゴ礁における炭素収支は1.4ミリモル(1日1平方ネートルあたり)となる。この計算値は非常に小さい。したがって、10月には、サンゴ礁では、二酸化炭素はバランスしていたと考えられる。今後、さらに測定データを得ることによって、サンゴ礁における年間の炭素循環を定量的に明らかにしたい。
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