1995 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07680561
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
竹中 規訓 大阪府立大学, 工学部, 助手 (70236488)
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Keywords | 酸性雨 / 凍結濃縮 / 凍結電位 / 酢酸 / 酸性霧 |
Research Abstract |
凍結による水中溶存物質の凍結による変化について基礎的な検討を行った。酢酸ナトリウムの弱酸性溶液の凍結による酢酸の試料からの揮散・損失について詳しく検討を行った。その結果,中性またはアルカリ性では酢酸の減少は観察されず,また酸性が強い条件でも揮散量が減少し,pH4前後の弱酸性で最も揮散が多いことがわかった。また,揮散は下から凍結したときにのみ観察された。また,凍結の初めからの揮散を調べた結果,凍結の途中では揮発は起こらず,全体が凍結つまり一番上部が凍結したときに少し揮散が起こり,その後凍結状態を保ったまま放置しておくと数十時間の間,徐々に気相へ抜けていることがわっかた。これは凍結濃縮により氷から未凍結溶液へ排除された酢酸イオンが高濃度となり,凍結電位(氷が正になると推定される)を中和するために氷から溶液へ水素イオンが移動し,酢酸が強くなった結果,氷表面から揮散すると考えられる。溶存気体の氷への溶解度が水中におけるものよりも低く,その結果凍結中に氷-溶液界面に気泡が生成する。酢酸はその中にも含まれると考えられるが,その気泡がつぶれるときにも揮散することが予想される。しかし,表面から氷を融解した場合と,氷表面を純水で覆って揮発を押さえるようにして融解した場合を比較したが,大きな差は見られなかった。このことは凍結した氷表面より酢酸が揮散すると,より氷内部より酢酸イオンが表面に移動し少しづつ揮散すると考えると説明できる。次年度はこれら結果をふまえさらに,揮散の機構を明らかにし,ギ酸,プロピオン酸,塩酸,臭化水素酸,アンモニアなど他の物質についてもその機構を確認する予定である。以上の結果は,近年問題となっている酸性雨の凍結条件で重要な結果であると考えられ,環境中の物質動態のプロセスの1つとして評価する必要があると考えられる。
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