1995 Fiscal Year Annual Research Report
ダイオキシンとその類縁体の分子構造及び構造毒性相関に関する研究
Project/Area Number |
07680593
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
森田 昌敏 国立環境研究所, 地域環境研究グループ, 総括研究官 (30132864)
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Research Abstract |
塩化ダイオキシン類の分子構造に関する知見の集積を行った.本年度は、1,3,7,8-TCDD、1,2,3,7,8-TCDD、2-アミノ-3,7,8-TCDDの結晶を合成し、そのX線回折を試みた.これらの結晶は極めて細長い針状晶であり、回折像は得られたものの、各回折線について十分なX線強度が得られず、解析結果は現在の段階では満足すべきものとなっていない.一方、平行して、スーパーコンピューターを用いた分子軌道法計算を行い、四塩化ダイオキシン類の分子構造及び電子密度を求めた.その結果によれば、22種類の四塩化ダイオキシン異性体は全て平面構造をもっていること、二つのベンゼン環を架橋する酵素原子の結合角はほぼ113°で一定であることが明らかとなった.また、C-Clの結合距離は、1.775〜1.777Åであり、C-Hの結合距離は1.083Åといずれもほぼ一定であった.四塩化ダイオキシンの毒性は、塩素の置換位置により劇的に変化するが、この変化は、二つのベンゼン環のツィストによって発生するという仮説は否定される.毒性は塩素位置を認識するリセプターの分子認識機構により発現の有無が決定されることとなる.1,3,6,8-TCDDは農薬CNPの不純物として知られ、環境中での残留が広く観測されている.毒性試験については1,3,6,8-TCDDの低毒性は哺乳動物で推定されていたが、メダカとサカマキガイを用いた試験においても確認された.同実験において、メダカ及びサカマキガイによる1,3,6,8-TCDDの生物濃縮が認められたが、濃縮の機構は、毒性発現のメカニズムとは異なっていることも明らかとなった.
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