1996 Fiscal Year Annual Research Report
スタフィロコッカルヌクレアーゼのプロリン変異体の作成と折れたたみ機構の研究
Project/Area Number |
07680709
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Research Institution | University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊倉 貞吉 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助手 (50251393)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
桑島 邦博 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助教授 (70091444)
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Keywords | スタフィロコッカルヌクレアーゼ / プロリン変異体 / cis-trans異性化反応 / ストップトフロー法 / 安定性 / 折れたたみ反応 / 分子動力学シミュレーション |
Research Abstract |
スタフィロコッカルヌクレアーゼ(SNase)の6個のプロリン残基の内、天然条件下でシス構造もトランス構造もとることが知られているPro47とPro117の変異体を作成し(P47A,P47T,P117G,P47A/P117G,P47T/P117G)、それらの尿素中での安定性とストップトフロー法による折れたたみ反応を解析した。Pro47の変異は、いずれもSNaseの安定性に影響を与えなかった。また、SNaseの巻き戻り反応及びアンフォールディング反応も、変異の前後で変化しなかった。一方、Pro117のGlyへの変異は、SNaseを約1.2kcal/mol安定化した。P117G及び二重変異体の巻き戻り反応は、依然として多相的であり、SNaseの巻き戻り反応を多相化する要因が、Pro47とPro117の異性化反応以外にもあることを示唆している。また、これら変異体のアンフォールディング反応は、1相になった。このことは、野生型やPro47の単一変異体で2相観測されたのは、Pro117が天然状態でもシスとトランスの両状態をとっているためであることを示している。野生型の各相の強度比から求めたシス:トランスの比は約9:1であり、NMR実験から報告されている値とよく一致している。 Pro47とPro117の変異に対するSNaseの応答の違いがそれぞれの周りの構造の揺らぎの差に由来するのではないかと考え、分子動力学シミュレーションを行った。その結果、Pro47を含むループは末端以外では分子内でも最も揺らいでいる部位だった。一方、Pro117の周りの構造は比較的堅かった。Pro47の周りの構造が天然条件下でも変性構造のような揺らいだ構造をとっていることが、Pro47の変異がSNaseの安定性にも折れたたみ反応にも影響を与えなかったことの原因であると考えられる。
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