精子形成過程に於いて作動する細胞死の分子細胞学的解析

1995 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 07680771
• Research Category: Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
• Research Institution: Nagasaki University
• Principal Investigator: 小路 武彦 長崎大学, 医学部, 助教授 (30170179)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 中根 一穂 長崎大学, 医学部, 教授 (60164240)
• Keywords: 精子形成過程 / アポトーシス / 潜伏睾丸 / エストロゲン / in situ nick tranolation / in situ TdT / lpr / gld

Research Abstract

1)正常成熟雄マウス精巣或いは潜伏睾丸マウス並びにβ-estradiol-3-benzoateを投与したマウス精巣、更にはlprとgldマウス精巣に関し、4%パラホルムアルデヒド固定及びZamboni固定パラフィンブロックを作製した。正常マウス精巣に関しては新鮮凍結切片並びに電顕用超薄切片も作製した。2)正常精巣の新鮮凍結切片をethanol/acetic acid固定後に、proteinase K (PK)で処理したものと無処理のものを用意し、in situ nick translation(ISNT)反応を行なってDNAの一本鎖部位を検出したところ、PK(-)ではelongated spermatidsの核のみが強染された。PK(+)ではelongated spermatidsに加えspermatogonia核の染色並びに散在性に種々の分化段階の生殖細胞核の染色が観察された。パラフィン切片でのin situ TdT反応の結果と併せ検討した結果、正常精巣では散在性にISNTで染色する細胞核がアポトーシス細胞であることが判明した。Spermatogoniaの染色はDNA合成に伴うもので、spermatidsの染色は終末分化の際に認められるものと同一であろうと考えられた。尚、正常精巣に於いて、アポトーシスは特定の分化段階で起こるのではなく、spermatogoniaからspermatidsに至る様々な段階で生じることが明かとなった。更に、lpr/lprやgld/gldでも同様な頻度のアポトーシスを観察した。種々の処理マウスではアポトーシスの出現頻度は処理後の時間経過に依存していた。3)正常精巣に於いて、アポトーシスの生化学的判定法である抽出DNAのアガロース電気泳動では、明瞭なladderを示す結果を得ていないが、超薄切片を用いての電顕観察により核内でのヘテロクロマチンの核膜周囲への偏在等の典型的なアポトーシス像を示す生殖細胞が散在性に観察された。4)以上の結果は、正常精巣に於いてもアポトーシス型の生殖細胞死が生じていること、またその出現は特定の生殖細胞の分化段階に限局されることなく散在性に生じることを示していた。

Research Products

• [Publications] Hashimoto,S.: "Differential staining of DNA strand breaks occurring in dying cells by non-radioactive in situ nick translation" Arch.Histol.Cytol.58. 161-170 (1995)
• [Publications] Koji,T.: "Recent advances in molecular histochemistry : in situ hybridization and southwestern histochemistry" g.Electron.Microsc.45. in press (1996)
• [Publications] Hakuno,N.: "Fas/APO-1/CD95 system as a mediator of granulosa cell apoptosis in ovarianfollicle atresia." Endocrinology. 137. in press (1996)
• [Publications] Koji,T.: "Non-radioactive in situ nick translation : a useful molecular histochemical tool to detect single-stranded DNA breaks." Acta Histochem.Cytochem.29. in press (1996)
• [Publications] 小路武彦: "アポトーシスの組織細胞化学。" 日本網内系学会誌. 35. 3-9 (1995)
• [Publications] 小路武彦: "特集アポトーシスの細胞生物学によせて。" 細胞. 28. 2-3 (1996)
• [Publications] 小路武彦: "アポトーシス実験法(辻本賀英・刀称重信・山田武編)" 羊土社, 283 (1995)
• [Publications] 小路武彦: "現代病理学大系-補遺I" 中山書店, 261 (1995)