1996 Fiscal Year Annual Research Report
リン脂質トランスロケースの同定:免疫化学的及び細胞遺伝学的アプローチ
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07680788
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Research Institution | The Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
梅田 真郷 財団法人 東京都臨床医学総合研究所, 炎症研究部門, 研究員 (10185069)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹内 研一 財団法人 東京都臨床医学総合研究所, 炎症研究部門, 研究員 (70270684)
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Keywords | リン脂質 / フリップ-フロップ / 細胞分裂 / 細胞骨格 / トランスロケース / 脂質二重層 / アクチン / ホスフロチジルエタノールアミン |
Research Abstract |
昨年度、膜リン脂質のホスファチジルエタノールアミン(PE)に特異的に結合するペプチド(Ro09-0198)を用いて、分裂期の細胞でのPE分子の動態を解析した。その結果、分裂終期の分裂溝においてPE分子の脂質二分子膜中での配向性が局所的に乱れ、同ペプチドを添加することにより細胞表面上でのPE分子の動きを制御すると、細胞質分裂が分裂直前で停止することを明らかにした。本年度は、分裂期および間期の細胞膜上における膜リン脂質の動態が細胞骨格系の再構成に如何に関わっているかについて解析を進めた。その結果、上記のPE結合性ペプチドにより細胞分裂が停止した細胞はオルガネラおよび微小管の再構成は正常に行われG1期の形態をとっていたが、収縮環を形成するアクチンフィラメントの分裂終期における脱重合が特異的に阻害されていることが明かとなった。このとき同ペプチドは分裂溝膜上に特異的に分布し、ペプチドが結合した膜直下にアクチンフィラメントおよびアクチンフィラメントと膜とを架橋するラディキシン分子の集積が認められた。上記のペプチドによるアクチンフィラメント再編の阻害は可逆的なものであり、PEリポソームを添加し細胞表面に結合したペプチドを除くと、アクチンフィラメントの脱重合およびラディキシン分子の遊離が誘導され、二核のシンシチウムが形成された。また間期の細胞に上記のペプチドを添加すると、速やかな細胞形態の変化が認められ、細胞表面にペプチドが結合した膜直下で局所的にアクチンフィラメントの重合が観察された。この細胞骨格系の再編は細胞外カルシウムおよびATPの枯渇、各種リン酸化酵素の阻害剤等の影響を受けず、何らかの新たなメカニズムを介して引き起こされていること考えられる。生体膜においてリン脂質が脂質二重層の内外で非対称に分布することが知られているが、その生理的機能は不明であった。本研究は、細胞膜上における局所的なリン脂質分子の配向性存在状態の変化が細胞骨格再編の制御に関わることを示唆する初めての知見となった。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] 榎本和生ら: "Redistribution of Phosphatidylothanolamine at the Cleavage furrow of dividing cells during cytokinesis" Proc.Natl.Acad.Sci.USA. 93. 12867-12872 (1996)
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[Publications] 藤本和ら: "Transmembrane phospholipid distribution revealed by freeze-fracture replica labeling" Journal of Cell Science. 109. 2453-2460 (1996)
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[Publications] 白土明子ら: "Recognition of phosphatidylsavine on the Surface of Apoptotic Spernatogenic cells and subsequent phagocytosis by Sertoli Cells of the Rat" Journal of Biol.Chem.272. 2354-2358 (1997)
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[Publications] 榎本和生ら: "Exposure of phosphatidy lethanolamine on the surfuce of apoptotic cells." Expertmental Cell Research. 232(印刷中). (1997)