1996 Fiscal Year Annual Research Report
アフリマツメガエルの卵母細胞内に存在する軸形成デタ-ミナントの解析
Project/Area Number |
07680806
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
木下 勉 関西学院大学, 理学部, 助教授 (30161532)
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Keywords | アフリカツメガエル / 細胞質因子 / 多発性外骨腫症 |
Research Abstract |
ツメガエル8細胞期胚の背腹割球間にはアクチビン応答能を含めいくつかの質的な違いが存在している。この質的な違いは、受精直後の細胞質の再配置により細胞質の不均一な分布が生じた結果であると考えられる。本研究では、ツメガエルの卵母細胞内に存在する軸形成デタ-ミナントを解明する一つの方法として、卵形成期特異的に卵細胞内に転写産物が局在する遺伝子に着目した。卵細胞内にモザイク的に存在する細胞質因子の一部は、卵形成期に転写され発生初期にはタンパクとして細胞質に局在している可能性が考えられる。このタイプの遺伝子は初期卵割期胚のmRNAの比較からは見いだせない。そこで、卵形成初期の卵母細胞と中期胞胚遷移以前の胞胚との間でDifferential displayを行い、卵形成期に特異的に発現している遺伝子の検討を行った。卵形成期に特異的に検出される多くのPCR産物をプラスミドにつなぎ換え、得られた部分塩基配列をコンピューター検索にかけた結果、アクチビン受容体をはじめ既知遺伝子のcDNA断片の他に、特徴のある新規cDNA断片が複数得られた。その一つであるクローンD8について塩基配列および予想されるアミノ酸配列のホモロジー検索の結果、ヒトext3のホモローグであることがわかった。この遺伝子は遺伝的多発性外骨腫症(exostosis)の原因遺伝子で、最近ヒトおよびマウスでクローニングされている。予想されるアミノ酸配列には既知の分子モチーフが見られず、全く新しい腫瘍原因遺伝子である。Xextと名付けた遺伝子は卵形成初期に転写され、転写産物は動物極側に移動し、卵割期には動物極側割球の細胞質中に局在するが原腸胚期には消失してしまう。神経胚後期になると、背側中胚葉の予定硬節領域で新たな転写が認められる。ヒトext3の転写抑制作用を考え合わせると、Xextは発生初期の動物極側割球の転写制御に関与している可能性が示唆される。
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