1996 Fiscal Year Annual Research Report
食塩欲求の発現に関与する生理活性物質の検索とその動態
Project/Area Number |
07680873
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
志村 剛 大阪大学, 人間科学部, 講師 (80150332)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 隆 大阪大学, 人間科学部, 教授 (60028793)
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Keywords | 味覚 / 食塩欲求 / 結合腕傍核 / 中脳腹側被蓋野 / 淡蒼球 / ユニット活動 / 動機づけ / ラット |
Research Abstract |
食塩欲求は、体内のナトリウムが欠乏した動物が食塩を積極的に探索し、摂取する行動である。本年度は、3つの異なるアプローチにより、脳の各部位がこの行動にどのように関与するかを検討した。1)橋の結合腕傍核の単一ユニット活動を麻酔下で電気生理学的に記録し、食塩やその他の味刺激に対する応答を食塩欠乏ラットと正常ラットで比較した。食塩欠乏動物では、食塩に対する応答が正常動物よりも有意に低かったが、他の味刺激に対する応答は正常動物と変わらなかった。すなわち、食塩欠乏時には、結合腕傍核レベルで食塩に対する応答が選択的に減少し、これが高濃度食塩水の摂取に有利にはたらくと推察される。2)行動学的研究から、食塩欠乏時には食塩に対する味覚嗜好性が変化すると示唆されているが、その神経メカニズムはほとんど知られていない。そこで、一般に動機づけ行動の発現に関与するといわれている中脳辺縁ドーパミン系に着目し、起始核である中脳腹側被蓋野を破壊して、食塩欲求に及ぼす影響を調べた。通電により同部位を広範に破壊した場合には、食塩欲求が有意に低下したが、神経毒によりドーパミン細胞を選択的に破壊した場合は、著明な障害は生じなかった。したがって、この系のドーパミンは食塩欲求にはあまり関与せず、ドーパミン以外の物質が重要であると考えられる。3)最近開発されたダイアリシス・バイオセンサーを用いて、自由行動中の動物の腹側淡蒼球からグルタミン酸放出をオンラインで連続的に測定した。嗜好性の味刺激を与えるとクルタミン酸放出は有意に増加したことから、この部位のグルタミン酸は味の嗜好性発現に関与することがわかった。以上の各実験及び前年度の成績から、食塩欲求は前脳と脳幹のネットワークにより発現し、各部位で異なる伝達物質が作用していることが明らかになった。
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[Publications] 志村 剛,国重陽子,山本 隆: "ラットの味覚行動に及ぼす中脳腹側被蓋野破壊の効果" 日本味と匂学会誌. 3. 492-495 (1996)
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[Publications] Grigson,P.S.,Shimura,T.& Norgren,R.: "Brainstem lesions and gustatory function:II.The role of the nucleus of the solitary tract in Na^+ appetite,conditioned taste aversion and conditioned odor aversion in rats." Behav.Neurosci.111. 169-179 (1997)
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[Publications] Simura,T.& Yamamoto,T.: "Parabrachial unit responses to taste stimuli in acutely sodium-deprived rats." Neurosci.Res.Suppl.20. S222 (1996)
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[Publications] Shimura,T.,Karadi,Z.& Yamamota,T.: "Changes in glutamate level in the ventromedial division of the globus pallidus during taste stimulation in freely moving rats." Jpn.J.Physiol.46.Suppl.1. S174 (1996)