LHRHニューロンは鼻に生まれ脳へ移住する -ニューロンの移動の分子機構の解析

1996 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 07680880
• Research Institution: Juntendo University School of Medicine
• Principal Investigator: 新井 康允 順天堂大学, 医学部, 教授 (50053004)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 村上 志津子 順天堂大学, 医学部, 助手 (20255649) ; 宮川 桃子 順天堂大学, 医学部, 助手 (90103845) ; 石 龍徳 順天堂大学, 医学部, 講師 (20175417)
• Keywords: LHRHニューロン / 発生 / 嗅上皮 / 移動 / NCAM-H / プロテオグリカン / ニワトリ胚 / ヒト胎児

Research Abstract

1.LHRHニューロンと嗅神経束が出現する前に(ED2.5)、嗅板由来の細胞が嗅上皮より索状に間葉組織中にのび、やがて前脳に接し両者の間に架橋を作る。これらの細胞はGAP-43、MAP-2、MAP-5陽性であってニューロンであると考えられる。LHRHニューロンの移動は最初このニューロンの橋に沿って起こり、その後嗅神経束が発達すると、嗅神経束が移動路の主役をなすようになることが判明した。
2.嗅板を除去する代わりに、嗅神経の発達の過程でメンブレンフィルターで嗅神経を遮断すると、LHRHニューロンは断端近くに無秩序に集積し、そこに留まるが、LHRHニューロンは市場の移動路でないNCAM-H陽性の神経束へ移入または迷入し移動し、その数が著しく増えることが観察された。この際にLHRHニューロンは間葉組織と共存するものは皆無で、神経成分の存在が必要である。同様な現象が嗅板組織の初代培養でもみられ、LHRHニューロンが必ずNCAM-H陽性の神経成分に沿って移動するのが観察された。
3.神経プロテオグリカン(6B4プロテオグリカン/フォスファカン)が移動中のLHRHニューロンに発現するばかりでなく、LHRHニューロンの移動路に当たる嗅上皮、嗅神経と前脳腹側部に発現するのが観察された。また、グリコサミノグリカンのうちヘパラン硫酸プロテオグリカンが移動中のLHRHニューロンに発現することが観察された。ヘパラン硫酸プロテオグリカンはNCAMと結合すると考えられるので興味深い。
4.ヒトの胎児では、胎生5週までLHRH陽性ニューロンは認められなかったが、胎生6週になると嗅上皮内側部の陥凹にある鋤鼻器官原基の上皮及びそこから脳に向かう鋤鼻神経と終神経と終神経節に多数のLHRHニューロンが認められた。嗅神経束内側部に位置する鋤鼻・終神経束、終神経節は強いNCAM-H陽性を示し、嗅神経内側を走行した後、前脳吻側底部から脳内に進入するが、この線維にそってLHRHニューロンも一緒に脳内に入るのが認められた。胎生7週になると鋤鼻器官原基上皮にはもはやLHRHニューロンは見られないが、嗅神経内側部の鋤鼻・終神経束及び終神経節に多数のLHRHニューロンが認められた。胎生6週で既に終板から視索前野に小数のLHRHニューロンが認められるが、胎生7週では前脳の内側部と外側部に多数認められ、内側部での分布は嗅結節から内側中隔野にかけての領域に多くのLHRHニューロンが認められた。また、視索前野から前視床下部にも少数のLHRHニューロンが認められた。胎生6週で既にNCAM-Hの発現は嗅神経の内側部に当たる鋤鼻・終神経束に強く認められたが、嗅神経束全体にNCAM-Hの発現が強くなるのは7週後半になってからであり、嗅神経束にはNCAMの発現に局在性があることが分かった。
この実験は本学倫理委員会において承認されている。

Research Products

• [Publications] Nishizuka M,Arai Y: "Gycosamminoglycans in the olfactory epithelium and nerve of chick embryos : an immunocytochemical study." Neurosci Res. 24. 165-173 (1996)
• [Publications] Nishizuka M et al.: "Cell surface-associated extracellular distribution of a neural proteoglycan,6B4 proteoglycan/phosphacan,in the olfactory epithelium,olfactory nerve,and cells migrating along the olfactry nerve in chik embryos" Neurosci Res. 24. 345-355 (1996)
• [Publications] Arai Y et al.: "Estrogen and apoptosis in the developing sexually dimorphic preoptic area in female rats." Neurosci Res. 25. 403-407 (1996)
• [Publications] 新井康允: "脳で産生されるエストロゲン" ホルモンと臨床. 44. 471-479 (1996)
• [Publications] 新井康允: "脳の性分化と遺伝子" ホルモンと臨床. 45. 105-110 (1997)