1995 Fiscal Year Annual Research Report
力覚制御ロボットによる生体関節の潤滑機能評価と臨床診断への応用
Project/Area Number |
07680953
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
馬渕 清資 北里大学, 医療衛生学部, 教授 (70118842)
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Keywords | 生体関節 / ロボット / 潤滑機能 / 摩擦測定 |
Research Abstract |
研究代表者の従来の研究によって、関節の起動摩擦すなわち動作を開始する瞬間の摩擦が静止荷重を加えた時間に依存して増大することが、明らかにされている。その原因は、ふたつ考えられていた。そのひとつは、スクイズ流体膜の潤滑効果が、荷重時間に依存して減少する効果であり、もうひとつは、軟骨の時間に依存した変形(粘弾性変形)に由来する摩擦抵抗(掘り起こしの摩擦)の効果である。しかし、いずれの効果が支配的であるかについては明らかにされていなかった。摩擦の増大の原因を明らかにすることは、病的関節の診断および疾患の予防といった臨床上の価値が高いので、これらの効果を分離するために、本年度は、イヌ膝関節そのもの、イヌ大腿骨骨顆/アクリル樹脂平板、およびイヌ大腿骨骨顆/ガラス平板を対象とした起動摩擦測定を試みた。片側を人工材料の平板に置き換えた理由は、掘り起こしの摩擦力の発生を防ぐためである。 実験装置に研究代表者の開発した摩擦測定ロボットを用い、起動摩擦を測定した。全すべり距離を3mm、荷重を10Nとした。予備動作で記憶した位置に沿ってロボットを動作させ、1.5mm摩擦した地点で0〜1800sの間で設定した時間、静止させた。その後、動作を再開して1.5mm摩擦した。摩擦力と垂直抗力は、脛骨側に固定された6軸力センサでセンシングして、パーソナルコンピュータに入力した。イヌ膝関節3例および、ウサギ膝関節1例について測定した結果、膝関節そのものと大腿骨骨顆/人工材料平板のいずれも、荷重直後に摩擦係数0.01以下であり、それが垂直荷重10Nの下で、30分の静止の後の起動の際の摩擦係数は、20倍の0.2程度まで上昇した。このことから、摩擦の増大の原因として、掘り起こしによる摩擦は、関与していないことが推定できた。
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[Publications] 馬渕清資: "関節の安定性-骨頭サイズの決定因子-" 日本臨床バイオメカニクス学会誌. 16. 111-114 (1995)
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[Publications] Mabuchi, K.: "The use of robotics teohnology to measure friction in animal joints" Clinical Biomechanics. 11 (in press). (1996)
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[Publications] 藤江裕道: "ロボティクスを応用した膝関節力学機能検査" 日本機械学会論文集. 61C. 1962-1967 (1995)
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[Publications] 藤江裕道: "膝関節動揺性試験における膝靱帯の張力分布(ロボティクスを用いた計測)" 日本機械学会論文集. 61C. 2521-2526 (1995)
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[Publications] 藤江裕道: "前十字靱帯および後十字靱帯に生じる張力とその分布" 日本臨床バイオメカニクス学会誌. 16. 147-152 (1995)
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[Publications] 小原健男: "実験的に作製した変形関節の摩擦係数とヒアルロン酸添加の潤滑効果" 日本臨床バイオメカニクス学会誌. 16. 357-362 (1995)
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[Publications] (社)日本トライボロジー学会: "トライボロジー辞典" 養賢堂, 338 (1995)