1995 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀の宗教哲学における現象学思想の受容に関する研究
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07710018
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
宮崎 真矢 東北大学, 文学部, 助手 (70239383)
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Keywords | マックス・シェーラー / 宗教現象学 / 事象・現象 / 現象学的還元 / 批判的遡行 / 本質直観 |
Research Abstract |
本年度は、以下のような経過により、交付申請書に述べた研究実施計画にほぼ沿う形で研究を実施した。 1 マックス・シェーラーの中期思想を軸に、彼のフッサール理解や現象学理解に関して、テキストの分析、文献収集等を行い、彼が宗教研究に応用した現象学的方法の特徴を把握した。その結果、次のことが明らかになり、これを論文「シェーラーの現象学理論について」の中で詳述した。 ・しばしば独断的と評されるシェーラーの現象学だが、その手法の要点は、自然的世界観や科学的世界観に現象学的還元を施し、より原本的な志向的意識へ向けて批判的遡行を遂行することにあり、この点ではフッサールと軌を一にしている。しかしシェーラーにおいて遡行は対象本質が所与になる直観的意識で停止する。このことはシェーラーの持つ形而上学的・宗教的信念に由来し、これが彼の現象学の射程を制約している。 2 以上の点をふまえたシェーラーの宗教現象学の方法論的検討を行った。その結果次の問題点が明らかになった。 ・上述の現象学的還元は宗教的主体のノエシス的諸層の基づけ順序を基準として行われるため、その作業に説得性を持たせるためには、この基準を明確化する必要がある。 ・還元、遡行といった現象学的分析手法はシェーラーの限界づけを越えて進行する可能性を秘めている。ここにおいて問題は、宗教の本質の現象学的分析に代わって宗教の根拠の現象学的確定に移行する。 ・宗教における対象本質や作用本質を研究者に現象させるために設定される地平は、神、啓示、信仰等が持つ無制約性の要求を制限する可能性があり、この点を鑑みて現象学的方法の有効性を再考する必要がある。 以上の問題点に留意し、シェーラーを題材に宗教現象学の方法論的有効性を考察する論文を投稿準備中である。
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Research Products
(1 results)