1995 Fiscal Year Annual Research Report
意味ネットワークにおける関係リンクの独立した機能と活性度の認知科学的検討
Project/Area Number |
07710065
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Research Institution | Shizuoka Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
水野 りか 静岡理工科大学, 理工学部, 講師 (00239253)
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Keywords | 意味ネットワーク / 関係リンク / 道具推論 / 活性度 / 格機能 / プライミング実験 / 予測 / シミュレーション |
Research Abstract |
本研究の目的は,意味ネットワークの概念間を結ぶ関係リンクが,従来の仮定よりも機能的で独立した活性度を持つという仮説を,実験とシミュレーションを利用した認知科学的アプローチによって検証することにあった. 1.心理実験 英語を材料とした道具推論の研究では,動詞を指示するだけで道具名詞にプライミング効果が得られるため,関係リンクは概念に従属したものと見なされてきた.しかし,英語の場合は語順自体が関係を規定するので関係リンクが表面上従属的に見えるが,実際はその機能を持つ独立した関係リンクが形成されている可能性は否めない.そこで本実験では,この機能を助詞が司る日本語を材料とし,助詞の有無を独立変数とした道具推論のプライミング実験を行った.用いられたプライムとなる動詞とターゲットとなる道具名詞の関連性は,予備実験に基づいて,3水準設定された.その結果,助詞あり条件だけでプライミング効果が得られ,そのピライミング効果は関連性の高い道具名詞ほど大きかった.このことは,道具推論は,特定の機能を持つ関係リンクがあらかじめ活性化されており,それに適切な概念が結びつくことで可能となることを示しており,関係リンクの機能性・独立性を仮定した本仮説は支持的証拠を得た. 2.シミュレーション 1.の実験結果をもとに,自然言語処理モデルCORESの概念間関係リンクを,格関係機能を属性として持つ独立した存在(ある意味ではノード)として設定した.その上で,動詞,助詞,と提示されていくことで道具名詞を予測するシミュレーションを行い,効率的に道具名詞だけが予測できること,しかも関連性が高く,プライミング効果が高かった道具名詞ほど予測指数(活性度に基づいて算出される指数で,これが高いものから順に予測結果とする)が高いことが明らかとなり,モデルの妥当性が示され,本仮説は検証された.
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[Publications] 水野りか: "プライミングにおける関係リンクの活性度の影響" 静岡理工科大学研究紀要. 3. 99-109 (1995)
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[Publications] 水野りか・菅沼義昇: "CORESによる自然言語処理における予測-文脈と助詞の影響の実現-" 人工知能学会誌. 10. 421-426 (1995)
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[Publications] 水野りか: "作業記録の各サブシステムによる情報保持の様相" 日本教育心理学会第37回総会発表論文集. 178 (1995)
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[Publications] 水野りか・加藤ひろみ: "統語と意味の並列処理過程の日英語間の相違" 日本認知科学会第12回大会発表論文集. 54-55 (1995)
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[Publications] 市木則行・水野りか: "漢字の読みにおける音韻処理自動化仮説の実験的検証" 東海心理学会第44回大会発表論文抄録集. 52 (1995)
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[Publications] 佐藤靖之・水野りか: "系列再生量に及ぼす形態・音韻・意味処理の影響" 東海心理学会第44回大会発表論文抄録集. 53 (1995)
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[Publications] 水野りか: "心の世界-現代を生きる心理学-,第2部13章 人間とコンピュータ" 生越達美・二宮克美(編)ナカニシヤ出版, 170 (1995)