1995 Fiscal Year Annual Research Report
基底領域に対する専門性が類推の遂行に及ぼす影響に関する研究
Project/Area Number |
07710099
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
藤田 敦 大分大学, 教育学部, 講師 (80253376)
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Keywords | 類推 / 専門性 / 仮説検証 / 文脈的固着 |
Research Abstract |
本研究の目的は,類推課題の解決時に,基底領域に対する専門性のレベルが,目標領域の検索過程に与える影響を検討することであった.実験では「胎児と妊婦(基底領域)の関係は,(x)と(y)(目標領域)の関係のようだ.なぜなら(z)だからである」という形式の文章の空欄(x)(y)(z)を埋めて完成するという類推課題を実施した.被験者は男・女大学生と看護教員候補生であり,事後に調べた妊娠や出産に関するテストでは,看護>女>男という順で専門的な知識の差が認められた.実験の結果,類推成績(生成された解答数・解の適切さ得点)は女>看護>男という順に,また,解の候補となる仮説の多さ(注目する関係構造の種類数)は,女>男>看護という順になった.この結果より,あるレベルまでは専門性の高さが類推を促進していると思われるが,ベースに対する専門的な知識に加え,ターゲットの候補となり得る幅広い知識をどれだけ持っているか(一般的な興味・関心の幅広さ)が仮説の多様さに影響するようである.ベース領域に対する高度な専門性を持つ看護群は,ベース領域を「科学的に,正しく」解釈するあまり,複数の仮説生成を可能にするような多様なベースの解釈が困難になっていると予想される(文脈的固着現象).ただ,看護群は,他群と比べ「科学的知識の獲得」という側面から見れば優れているが,必ずしも「妊娠・出産」に関する領域で具体的な経験を積んだ専門家ではない.出産という出来事に数多く接している本当の専門家だったならば,科学的知識にとらわれない経験的知識なども利用した多様なベース領域の解釈ができたであろう.ところで,本実験では「思いつく順に解答を記入」するように指示したが,そこで現れる解答の順序が,実際に行われている仮説の検証過程を正確に反映しているとは言い難い.これらの問題を克服することが今後の検討課題である.
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