1995 Fiscal Year Annual Research Report
外資主導工業化の中での発展途上国都市の構造変動-メキシコ北部の事例研究
Project/Area Number |
07710129
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小井土 彰宏 北海道大学, 文学部, 助教授 (60250396)
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Keywords | 輸出志向工業化 / 都市化 / メキシコ / 多国籍企業 / 空間構造 / 不均等発展 |
Research Abstract |
本研究の結果、メキシコにおける輸入代替工業化路線から輸出志向工業化路線への産業戦略の転換は、都市化のパターンを大きく変猊させつつあることが明らかになった。メキシコの人口統計分析は、これまでの大都市、特に主座都市(primate city)であるメキシコ・シティへの極端な人工集中から、新しく勃興しつつある北部の工業都市への人工移動の方向の転換を示した。これらの都市では、アメリカや日本の企業の投資が急激に拡大し、特にカリフォルニア州に隣接するティファナ市では、テレビやパーソナル・コンピューターを中心とする電子産業の地域圏(industrial district)が形成されつつある。そこでは、一方で多国籍企業の横断的な企業間ネットワークが形成されながらも、他方で外国企業へのメキシコ部品企業の連関(linkage)が未発達なまま、産業都市としての急速な膨張が続いている。 このような産業構造上の問題点は、都市の空間構造にも反映している。CD-ROM化された1990年メキシコ国勢調査データの分析は、職業、所得、教育レベルといった諸側面でティファナ市の内部での地区間の社会的格差が非常に大きなものであることを示した。特に、都市膨張に伴って拡散した工業地帯の周辺の地域には、居住期間が短い農村からの移住民が集中し、様々な指標からみてこの都市の社会的な底辺を形成している事が明らかになった。特に、居住環境、基本的な公共サービスの面での問題は深刻である。この萌芽的研究では、このような旧市街地区、新興の中間階層居住区、そして周縁的な地域の工業労働者街の比較が焦点であったが、今後は労働者街の中の異なるタイプの比較分析が課題となるだろう。
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