1995 Fiscal Year Annual Research Report
成人の再社会化過程を制約する地域社会特性の変容を促す社会的影響力に関する研究
Project/Area Number |
07710194
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Research Institution | Naruto University of Education |
Principal Investigator |
芝山 明義 鳴門教育大学, 学校教育学部, 助手 (10243742)
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Keywords | 再社会化過程 / 被差別部落 / 社会的影響力 / 市民文化活動 / 演劇 / 人間形成 |
Research Abstract |
本研究は、変容する地域社会生活への成人期再社会化過程を制約する地域社会特性の分析から、被差別部落と一般地域の住民の関係性の変容を促す社会的影響力の構成と作用の実証的検討を目的として、研究計画にしたがい、以下の調査研究を実施した。1 地域社会の文化活動に関する文献を探索し、特に調査対象地域に特徴的な演劇活動に関する各種資料を収集し多面的に検討した。また、成人期の学習機会に関する文献を収集し、地域社会の学習機会の構造を中心に理論的に検討した。2 調査対象地域である大阪府豊中市において、行政施策の把握のため、地域文化活動に関する資料を追加収集し、行政職員からの聞き取りをおこなった。3 被差別地域と一般地区の住民及び一般市民の文化活動による相互交渉過程とその社会的影響力の検討のため、活動運営者からの文書を含む情報の収集、活動参加者への面接による資料収集及び活動の中心である市民演劇活動の継続的な経過観察と一部参与による資料収集を実施した。以上の収集資料の検討・分析により、教育を直接の目的としない市民文化活動が両地域住民に相互交流と理解の機会を提供し、被差別地域住民にはその活動範囲を広げて地域の開放性を高め、一般地域住民にも被差別地域住民への関与を促す意識変容をもたらすことで、両地域の関係性の再形成の契機となることを指摘できる。また、市民演劇活動は、成人を中心をした多世代住民の相互交流と共通体験を生み、世代間の相互理解を実現していることを重要な知見として指摘できる。同時に、一般市民の活動運営への主体的関与が、一般市民と行政担当者との関係性を変容させ、地域社会のシステム変容へと架橋する可能性についてその萌芽が認められる。この、市民文化活動が地域社会の変容要因としてもつ人間形成機能を、多地域・多世代による水平的・縦断的関係の再構築過程として再定式化し、検証することが今後の課題である。
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